木村正治のデイリーコラム

木村正治(きむらまさはる)が世の中の様々な事項について思う事や感じた事を徒然に綴っています。

TPP推進論者に申し上げたい事

2012-11-27 13:26:08 | インポート
 半年程前にあるコンサルタントとTPPについて話を
した事があった。そのコンサルタントはとにかくTPP
に加入するべきだ、加入しないほうがおかしいと言う。
 私はそのコンサルタントにどうしてそう思うのかと尋
ねると、貿易が活発になるとか日本経済再生の為には必
要だと述べてくる。ではTPPについて説明してくださ
いと言うと自由貿易だという程度しか説明できない。
 説明できないのに何故、加入するべきだと言うのかと
尋ねるとムキになってきた。
 多くの人がこのような状態ではなかろうか。
 TPPという言葉は知っていても内容について全体像
をほとんど知らない。正確に言えば知らされていない。
 日本のメディアもTPPについて決して正しく報道し
ない。本質を知らされないまま国民も識者も是非を問われ、
あろうことか加入ありきの報道がされてきた。
 異常事態である。

 例えば二人の人がいるとする。ある契約を前にして二人
とも内容を全く知らない状態だとする。一方は内容はよく
分からないけれど、とにかく良い話らしいので契約すると
息巻いている。もう一方は内容がよく分からないから契約
するわけにはいかないと息巻いている。
 皆様はどちらの姿に共感できるだろうか。
 私は前者の姿が危険だと思う。分からないから契約しな
いというのは自然な判断ではなかろうか。
 国民はTPPという国を挙げた契約についてほとんど何
も知らされていないのである。自由貿易と関税の撤廃が行
われるらしいという中学生向けのスローガン程度しか知ら
されていない中で、TPP加入に執念を燃やし、加入あり
きの理論を展開しているあらゆる立ち位置の人に申し上げ
たいのは、では、あなたの自分の言葉で国民にTPPにつ
いて全体像を的確に説明した上で、だから加入するべきだ
という論理を展開するべきではないかという事である。
 私は私なりに知れば知る程、TPPには絶対に加入する
べきではないと申し上げたい。

 まさにTPPについて我が国を強制的に加入させるべく
御用学者の総動員状態が続いている。
 本日も某朝刊に御用学者としか思えない識者のTPP加
入推進論が展開されていた。経歴を見ると米国コーネル大
学教授を経ている。米国の大学で教授を務めたという事は
もう既にこの時点で何かを仕込まれていると見るべきだ。
 この学者は以下の論点を述べている。

①戦後の日本の発展は自由な貿易ができる事で可能になった
②アジア地域での新しいルールづくりに参加するのか否か
③TPPは成長が見込めるアジア太平洋地域での経済自由化
 を目的にしたルール作りだ
④世界の通商秩序の主導権を取っていくものだ
⑤東アジア首脳会議では日本、中国、韓国が自由貿易協定の
 交渉を来年開始することで合意しアジア16カ国で包括的
 経済連携(RCEP)の交渉に入る
⑥RCEPでは農業や知的財産等の重要な部分の扱いが不透
 明だ
⑦日中韓FTAも領土問題と通商を切り離して議論しにくい
⑧上記⑥⑦により質が高いTPPへの参加が日本にとっては
 重要だ
⑨円高が続く中、現在の日本の法制度、税金、エネルギー政策
 は「製造業は国内から出ていけ」と言っているに等しい
⑩日本は今年度中にTPP交渉に参加しないと出来上がった
 ルールを受け入れるか否かの二者択一の選択しかできなく
 なり国益を損なう

 
 ぼんやり考えていると、なるほどと受け入れてしまいがちだ。
しかしよく考えて見よう。
 まず①は自由な貿易ではなく我が国が優秀なものづくりを確
立し国民の知的水準や教育水準が高かった要素の方が大きい。
良いものは必然的に求められる。それが市場の原理である。
 ②について、TPPはアジアでのルール作りが主眼ではない。
米国の狙いはあくまでも我が国である。
 ③について、米国がTPPで想定しているエリアの全GDP
は我が国と米国だけで97%になる。従ってTPPは事実上の
日米契約のようなものである。
 ④について、これこそ米国の狙いである。
 ⑤について、これは単なる事実である。
 ⑥について、各国の国益や伝統文化について重要だからこそ
不透明になっているのだ。RCEPで明確にできないものを何
故、TPPでは明確にできるのか。敢えて明確にすれば失われ
るものが大きい。
 ⑦について、世界の現実は全てが一体となって交渉されてい
る。切り離して縦割りの中で思考する癖がついているのは日本
の弱点である。
 ⑧について、飛躍している。説得力がない。
 ⑨について、円高は輸入産業や観光産業にとっては好条件で
ある。全ての産業について悲観的ではない。また輸出に主眼を
おいている製造業の浮沈を決めるのは為替であり法制度、税金、
エネルギー政策ではない。為替については円の信用が高くドル
が暴落した結果の姿であって実質経済を貫いてきた我が国の得
た通貨の国際信用力である。虚構経済を行った米国の通貨の信
用が暴落した結果である。適切な為替について政治判断する事
こそが重要である。
 ⑩について、オバマ大統領が2012年度中に何が何でも日本を
TPPに加入させると述べている。何故なのか。何故、今年度中
なのか。いつの時期にできたルールであっても我が国の国益を損
ね、国民に疲弊と犠牲をもたらせるルールならば受け入れるべき
ではない。拒否しなければならない。


 TPP加入を強く推進しているあらゆる立ち位置の方々は、繰
り返すが、自分の言葉で国民にTPPの全体像を示し、それを以
って何故加入する必要があるのかを述べなければならない。
 国民一人一人が本質を知ろうと努力し、大切な我が国の伝統文化
や産業、あらゆる領域を守らなければならない。
 自由という掛け声の下で無秩序で荒廃した光景を展開しては
ならない。自由という定義を改めて考え直さなければならない
時代にあると言える。
 TPPは自由貿易や関税の問題に矮小化されて伝えられてい
るが、それだけでは済まない。あらゆる全ての分野、領域に及
ぶ極めて重要な内容なのである。
 あなたは内容の全てを知らない契約書にサインできるだろうか。

コメント
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