クリスマス近になって、虚庵夫人は立派なポインセチアを買って、意気揚々とご帰館遊ばされた。両腕に抱えた鉢から「紅の葉」が溢れて、笑み満面の顔がその上に乗っている感じであった。陽だまりで植え替えをしていた虚庵夫人の、素っ頓狂な声がして、行って見ればポインセチアはポッキリと折れていた。ポインセチアの茎は意外と脆いことを花屋から教えられて、「随分と気を付けていたのに!」とふてくされていたが、ほどなく「花瓶と鉢植えが出来たわ」とアッケラカンと笑いとばししていた。彼女は何を胸に秘めて、ポインセチアを植え替えていたのやら・・・。年を越えても、ポインセチアはまだ愉しませてくれている。
陽にもゆるポインセチアに 若き日の
念ひを秘めて妻は植えるや
ときめきを抑えかねつも 若き日の
滾るこころを 想えばいまだに