何時もの散歩道の脇にはトベラが植えられているが、葉の間から小さな赤いものが見えた。近寄ってみると、それはトベラの実であった。お腹が空いていたからであろうか、瑞々しく美味そうに見えた。果実が三つに割れて、中から小さなお菓子のような種が、「食べて、食べて」と迫っている風情だ。色合いは明るい深紅で、しかも透明な蜜に覆われて糸を引いている。手を伸ばして摘み取り、口に含んでみたい衝動に駆られたが、その時、道行く人が通り過ぎて、辛うじて思いとどまった。
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陽だまりにトベラは口を思いきり
開きてかざしぬ真紅の果実を
いかでかはかくもそそるやくれないの
いろあざやかにとべらのかじつは
いとあつきくちづけににていとをひく
とべらのおもいをたれやうけまし
隣には、果実が割れて久しく日が経ったのであろうか、ベンガラ色に変色しているのが見えた。日を経てもなお、つややかで美味しそうに見えた。後から思い返せば、虚庵居士は余ほど空腹だったのかもしれない。
トベラの実を見つめて、ヨダレを垂らす虚庵居士をご想像あれ。
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日を経れば色合い深みを増しにけり
歳ふる女(ひと)の色香にも似て
トベラって初めて知りました。
植物も人の一生もどこか似ていますね♪
空腹の虚庵さまを想像中です・・・
いたずらっぽい笑顔がステキです
くれないのトベラの果実は乙女ごの
滾る思いと きみ 言いたもうかな
草花を眺めることをしなくなっていたことに少し哀しくなりました。
『日を経れば色合い深みを増しにけり歳ふる女(ひと)の色香にも似て』
この歌のような女性になってみたいと思いました。
人の世でも同じですが、目に訴えてきた、彼・彼女達の心を、受け止められるようになりたいと、念じております。