「うつろ庵」の狭い庭には、何時の間にかこの株が沢山増えた。正しい名称を知らないが、俗に「銭の木」とか「銭サボテン」と呼んでいるようだ。正真正銘の「銭のなる木」であれば、我が家は余程の金持ちになっている筈であるが、どうも俗説はあてにならぬようだ。
この時期には、緑の葉の縁に赤紫が差して、虚庵夫妻を愉しませてくれる。既に花莟を多数つけているが、やがていっせいに白い小花を咲かせよう。虚庵居士は寒い今の時節の、葉の表情がえも言えず愛おしく、好きである。
緑なす厚き葉肉はいとしくも
赤紫の色差す冬かな
葉の内ゆ淡き緑の花莟
のぞけば既に赤み差しきて
いと寒き昨夜の凍みはおみな児の
指先こごえて赤み差すなり
指先を朝日にかざして揉みしだく
幼き冬日をおもほゆるかな