昨日少しばかり暇があったので、「イラク自衛隊『戦闘記』」という本を一気に読んだ。あの「ヒゲの隊長」として有名になった、自衛隊イラク派遣先遣隊長の佐藤正久氏の書いたものだ。
彼の言っていることにすべて同意できるというわけではないが、率直に言って、「いい本」だった。やはり現場でものを体験している人間のいうことには説得力がある。
「現地の人の視点に立ち」イラク人を主役にした復興支援をおこなうために四苦八苦する佐藤氏や、真摯にイラクの復興を願い志願して派遣された自衛隊員たちの姿、また、現場の状況を理解せずに現実離れしてしまっている政府見解への疑問など、僕がこれまで知りえなかった自衛隊海外派兵の状況がよくわかったし、多くを学ばせてもらった。
僕はこれまで自衛隊の海外派兵に関しては、憲法9条を盾にその理由の如何を問わず断固反対の立場をとってきたが、この本を読んで、彼の言葉でいう「日本人の善意の代理者・実行者」という使命を忠実に実行できるものであれば、天災の被災地などで民間団体と協力した自衛隊の他国への援助もありかなとまで思えるようになった。
とはいえ、イラクに関しては、佐藤氏と同じ現場主義の僕は、いまでも自衛隊派兵はすべきではなかったと確信している。それはまず、イラクが「戦闘地域」であること、そして何より、この自衛隊派遣が、イラク侵攻をおこなった当事者ブッシュ大統領に「ノーといえなかった」属国日本の代表、という意味合いをもっていたこと、がその理由だ。
佐藤氏のいうように、自衛隊が苦労しながら現地の人との友好関係を築き、サマワ住人たちの多くが支援を感謝したとあれば、それは素晴らしいことであり、隊員たちの善意と努力を僕も日本人として誇りに思う。
しかし、それは実際に恩恵をこうむったサマワに限った話であり、もっと広い眼でイラク情勢を見た場合、多くのイラク国民たちにとって自衛隊は、武器を持って自国に侵入してきた英国やその他多国籍軍と変わらない存在であった、ということも事実なのだ。仮にイラク人達のこの認識が誤解に基づくものであるにせよ、あの時期に、あのようなかたちで派兵すれば、彼らにそういう見方をされるのはごく当然のことである。日本も、国連決議を無視してイラクを侵略したアメリカの仲間に過ぎないのか。。。そう考えたイラク人たちの落胆は少なくなかった。
「どうして日本はイラクに軍をおくったんだ?」「日本は引き上げるべきだ。。。」北部のモズルや首都バグダッドで取材していたとき、僕は幾度となくこんな言葉を耳にした。
イラク人たちはもともと日本人たちに多大な好意を抱いているので、きつい口調で日本を非難するわけではない。ただ、僕が日本人だとわかると、イラクには日本の軍隊はいらないと思う、と諭すように語りかけてくるのだ。
自衛隊は一人の死者もなく帰国することができた。これははじめからサマワの治安が比較的安定していたということに加え、本書にもあるように、地元民と友好関係を築こうとする自衛隊員たちの努力の成果ともいえるが、それは実に幸運であったと思う。いま再び自衛隊をイラクに派兵したら、とてもそういうわけにはいかないだろう。
戦闘に巻き込まれれば、戦うことを余儀なくされる。イラク市民を殺す結果になるかもしれないし、自衛隊員自らが命を落とすことになるかもしれない。そうなれば自衛隊も、結局はイラクに駐留している米軍となんら代わりのない「侵略軍」となってしまうのだ。
先にも述べたように、この本のおかげで僕の固い頭も、自衛隊海外派兵に対して少しは柔軟になった。しかし、前回のイラク派兵のように、その詳細を公表することもなく、任務遂行時や撤退時に報道陣にもドアを閉ざすような隠密なやり方をしていては、(外務省によるジャーナリストのビザ取得妨害さえあった!)いくら現場の自衛官たちが善意をもって努力しても、国民としてとても納得できる派兵ができるとはいえないだろう。
http://blog.goo.ne.jp/kuniphoto/e/bf04fcc409059e47e470b03aae098da5
http://blog.goo.ne.jp/kuniphoto/e/eb88e056be7575f0a43bc36605c77e97
今年初め、佐藤氏は30年近く勤めた自衛隊を退官し、先の選挙で参議院議員として当選を果たした。
僕自身も現場に出なくては撮れないカメラマンとして、あくまで現場の視点で意見してきたから、立場や主張は違えど佐藤氏が述べていることはよくわかる。これから、彼のような「現場に精通した」人間が、その経験を生かして国民の総意を得られるような自衛隊のあり方というものを考え出していくことに期待したいと思う。
彼の言っていることにすべて同意できるというわけではないが、率直に言って、「いい本」だった。やはり現場でものを体験している人間のいうことには説得力がある。
「現地の人の視点に立ち」イラク人を主役にした復興支援をおこなうために四苦八苦する佐藤氏や、真摯にイラクの復興を願い志願して派遣された自衛隊員たちの姿、また、現場の状況を理解せずに現実離れしてしまっている政府見解への疑問など、僕がこれまで知りえなかった自衛隊海外派兵の状況がよくわかったし、多くを学ばせてもらった。
僕はこれまで自衛隊の海外派兵に関しては、憲法9条を盾にその理由の如何を問わず断固反対の立場をとってきたが、この本を読んで、彼の言葉でいう「日本人の善意の代理者・実行者」という使命を忠実に実行できるものであれば、天災の被災地などで民間団体と協力した自衛隊の他国への援助もありかなとまで思えるようになった。
とはいえ、イラクに関しては、佐藤氏と同じ現場主義の僕は、いまでも自衛隊派兵はすべきではなかったと確信している。それはまず、イラクが「戦闘地域」であること、そして何より、この自衛隊派遣が、イラク侵攻をおこなった当事者ブッシュ大統領に「ノーといえなかった」属国日本の代表、という意味合いをもっていたこと、がその理由だ。
佐藤氏のいうように、自衛隊が苦労しながら現地の人との友好関係を築き、サマワ住人たちの多くが支援を感謝したとあれば、それは素晴らしいことであり、隊員たちの善意と努力を僕も日本人として誇りに思う。
しかし、それは実際に恩恵をこうむったサマワに限った話であり、もっと広い眼でイラク情勢を見た場合、多くのイラク国民たちにとって自衛隊は、武器を持って自国に侵入してきた英国やその他多国籍軍と変わらない存在であった、ということも事実なのだ。仮にイラク人達のこの認識が誤解に基づくものであるにせよ、あの時期に、あのようなかたちで派兵すれば、彼らにそういう見方をされるのはごく当然のことである。日本も、国連決議を無視してイラクを侵略したアメリカの仲間に過ぎないのか。。。そう考えたイラク人たちの落胆は少なくなかった。
「どうして日本はイラクに軍をおくったんだ?」「日本は引き上げるべきだ。。。」北部のモズルや首都バグダッドで取材していたとき、僕は幾度となくこんな言葉を耳にした。
イラク人たちはもともと日本人たちに多大な好意を抱いているので、きつい口調で日本を非難するわけではない。ただ、僕が日本人だとわかると、イラクには日本の軍隊はいらないと思う、と諭すように語りかけてくるのだ。
自衛隊は一人の死者もなく帰国することができた。これははじめからサマワの治安が比較的安定していたということに加え、本書にもあるように、地元民と友好関係を築こうとする自衛隊員たちの努力の成果ともいえるが、それは実に幸運であったと思う。いま再び自衛隊をイラクに派兵したら、とてもそういうわけにはいかないだろう。
戦闘に巻き込まれれば、戦うことを余儀なくされる。イラク市民を殺す結果になるかもしれないし、自衛隊員自らが命を落とすことになるかもしれない。そうなれば自衛隊も、結局はイラクに駐留している米軍となんら代わりのない「侵略軍」となってしまうのだ。
先にも述べたように、この本のおかげで僕の固い頭も、自衛隊海外派兵に対して少しは柔軟になった。しかし、前回のイラク派兵のように、その詳細を公表することもなく、任務遂行時や撤退時に報道陣にもドアを閉ざすような隠密なやり方をしていては、(外務省によるジャーナリストのビザ取得妨害さえあった!)いくら現場の自衛官たちが善意をもって努力しても、国民としてとても納得できる派兵ができるとはいえないだろう。
http://blog.goo.ne.jp/kuniphoto/e/bf04fcc409059e47e470b03aae098da5
http://blog.goo.ne.jp/kuniphoto/e/eb88e056be7575f0a43bc36605c77e97
今年初め、佐藤氏は30年近く勤めた自衛隊を退官し、先の選挙で参議院議員として当選を果たした。
僕自身も現場に出なくては撮れないカメラマンとして、あくまで現場の視点で意見してきたから、立場や主張は違えど佐藤氏が述べていることはよくわかる。これから、彼のような「現場に精通した」人間が、その経験を生かして国民の総意を得られるような自衛隊のあり方というものを考え出していくことに期待したいと思う。
#これに対して高橋氏が日本人として、どう答えたのかが肝要。私が一番聞きたい部分だ。
いみし。