Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

再稼働反対デモ

2012-08-19 07:52:31 | 日本
3週間の日本滞在中、反原発再稼働のデモに3度足を運んだが、いろいろと思うことがあった。

デモに10万、15万人集まったと、国外からニュースやtwitterを通して聞いている時は、ようやく日本も変わってきたのだ、とかなり希望を抱いていたのだが、実際に日本社会の空気に触れてみて、残念ながらまた悲観的になってしまった。

まずデモの有り様だが、これほど警察にコントロールされたものは他の何処でもみたことがない。地下鉄の駅を出た途端大勢の警官に誘導され、参加者たちは細かく仕切られた歩道に分断されてしまう。時折、安保世代らしき年配の人たちが警官に食って掛かるのを見かけるくらいで、ほとんどの人たちは誘導に従って行列をつくるだけ。ここでも「従順で礼儀ただしい日本人」の姿は健在だ。集まった人たちは結局、ブロックごとに分けられた細長い行列になるだけで、デモの本来の力となるべき「集団のエネルギー」はほとんど削がれてしまっている。もともとデモとは、市民の数をもって政府に圧力をかけるべきものであって、政府が脅威を感じなくては意味がない。現在の官邸前デモはまるで「政府公認の毎週の行事」に成り下がってしまったような、そんな違和感を感じずにいられなかった。

確かにこの国では、市民が暴徒化するはずもないし、血気盛んな一部がそういう行動に出ても、機動隊にあっという間につぶされて終わってしまうだろう。それ以前に、デモが平和的におこなわれなくては、多くの人々が運動から離れてしまうのも眼に見えている。これはもっと効果的なデモをと思っている人々にとってはおおきなジレンマだ。

では政府に脅威を与えるにはどうすればいいか?さらに数を集めるしかないだろう。それも東京だけではなく、全国的に国民が立ち上がらなくてはならない。もしも、各都道府県庁にそれぞれ一万人(これより多いにこしたことはないが)が毎週押しかけたら、かなりの効果があるんじゃないだろうかと思う。

しかしこれも無理だろうな、というのが正直なところだ。

今回は東京、仙台そして神戸でそれぞれ数日間を過ごしたが、やはり国民の大多数はそれほどの危機感を持っていないと痛切したからだ。みな頭のなかでは漠然と考えているのだろうが、黒い雨が降って来るでもなし、突然の頭痛が起きて倒れるわけでもない。とりあえずは不自由もなく生活できている。次の爆発がおこったり、何年後かに放射能の影響がでてからでは手遅れなのだが、実際に自らの生活が脅かされる自体がおこるまで、ほとんどの人々は行動を起こすほどの危機など感じてはいない。結局は想像力の欠如、ということになるんだろうな。

これは僕の友人たちや家族も例外ではなく、一緒にいても原発のことなどほとんど話題にのぼらなかったし、ましてやデモに足をはこんだという知人・友人など皆無だった。こんな日本の空気を肌で感じて、残念ながら冒頭に述べたように僕はかなり悲観的になってしまったのだ。そんな訳で、いつもは楽しめる日本滞在も、今回は少し複雑なものになってしまった。

(もっと写真をみる http://www.kunitakahashi.com/blog/2012/08/19/nuclear-protest-japanese-style/ )

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (jam)
2012-08-23 19:14:21
本日このブログを偶然知り、全投稿を読ませていただきました。
高橋さんの考え方や、表現しておられる世の中の出来事に深く感銘を受けました。
途中で何度も気持ちが昂ぶり涙が溢れ出てしまい、落ち着いてはまた読み続けました。
これからもこのブログを通じて様々なことを享受させていただきたいと思います。

私は公務員をしております。
ブログ記事の公務から依頼の原稿料などは吹き出しましたが。
公務は原稿料、外注費、ボールペン1本の価格まで全て決められております。
無駄遣いできない体質強化のためご容赦くださいませ。
またコメントします。
大きな感動をありがとう。


返信する
Unknown (Kuni Takahashi)
2012-08-24 21:48:01
jamさん、コメントありがとうございます。役所の原稿料の内実、勉強になりました。これからもよろしくお願いします。
返信する

コメントを投稿