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アルジャーノンに花束を

 米国のSF作家、ダニエル・キースの代表作に『アルジャーノンに花束を』がある。何度も映画化され、舞台にもなった名作である。

 主人公は知的障害のある三十台前半の青年チャーリー。知能遅れの教室で読み書きを習っているのだが、あるとき大学の教授から頭を良くする手術を受けてみたらどうかと言われる。

 すでにハツカネズミのアルジャーノンが実験に使われていて、すばらしい知能の向上が見られる。迷路実験では易々とチャーリーに勝つほどだ。

 チャーリーはこの手術を受け、IQが150を超える天才となる。もともと知能遅れの教室に通うというように向上心の強かったチャーリーは物理学、数学、言語など手当たり次第に知識を吸収していく。短期間に30もの言語に精通するほどの天才ぶりだ。

 しかし、理解力が進むにつれ、それまで彼の周囲にいた人たちの振る舞いの意味を知ることになる。沢山いたと思っていた仲間にだまされ、いじめられていたことを。

 その上、手術を勧めた教授よりも理解力が勝るようになり、学問上の衝突を起こしたりして彼の周囲から人々が去っていく。手術前には感じたことも無い孤独感にさいなまれる。

 そんな時アルジャノンに異変が起きる。知能の退行が見られるのだ。チャーリーはこの現象を調べ、急激に増大した知性は急激に減少することが避けられないことを見出す。いまや比類の無い知性を与えられたチャーリーに恐るべき宣告が下されたのだ。

 若い頃に読んだ時はこんな手術が可能であったら何が何でも受けるぞなどと妄想したものだ。そして現実に日々知能の退行におびえている最近、もういちど読み直したとき昔とは全く異なる読後感であった。色々な読み方のできるお勧めの本だ。

 文章はチャーリーの書いたレポートと言う形式をとっている。最初は読点の無い、ほとんどかなで書かれた文章だが、チャーリーの知能の向上に伴いだんだんと漢字が増え、正しい読点が打たれ、読みやすくなっていく。小尾芙佐の翻訳は見事だ。

 しかし翻訳も良いが名作と呼ばれるものは原文でも読んでおきたい。もちろんルビ訳で。これは英文に漢字でルビが振ってある本で、便利なものである。

 日本語でかなを主体とした表現は原文ではスペルの間違いで表現している。たとえば冒頭の一文。

けえかほおこく1 3がつ3日

 ストラウスはかせわぼくが考えたことや思いだしたことやこれからぼくのまわりでおこたことわぜんぶかいておきなさいといった。

かなの多い文章はなかなか読みにくいが、原文では

Progris riport 1 martch 3

Dr Strauss says I shoud rite down what I think and remembir and every thing that happins to me form now on.

となっていて、たとえばProgrisには正しいいスペルProgressとルビが振られている。これは読みやすい。実はルビが無くてもすらすら読める。間違ったスペルに全く違和感が無いのは自分で英文を書くとこんな文章になるからではないかと思う。残念ながらすでに私の知能は退行がはじまっているようだ、、、、、、、、



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