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長谷川潾二郎(はせがわりんじろう)展

 NHKの日曜美術館で紹介された長谷川潾二郎(はせがわりんじろう)展を見たいというリクエストがあり、神奈川県の平塚美術館に出かけた。

 私の感覚では相模川を越えるということは、文明果つる地に出かけるということで、競艇や競輪で有名な平塚に美術館があるとは知らなかった。その上長谷川潾二郎という画家も知らなかったので全く期待しないで出かけた。

 カーナビに従って美術館の駐車場につくと入場待ちの車が列をつくっている。車のナンバーを見ると品川ナンバーやら横浜ナンバーが多い。それでも5分くらいで中に入ることが出来た。

 館内はそれほど混んでいなくて、インターネット割引券をプリントして持ってきたので入場料を600円払って展示室へ。

 館内のそこここに長谷川潾二郎の言葉が表示されている。例えば、

===================================

 私は彼の言う通り目の前にあるものを描く。しかし、それは実物によって生まれる内部の感動を描くのが目的ですから、実物を描いている、とは言えません。つまり私が描いているのは実物ではありません。

しかし、それは実物なしでは生まれない世界です。

この間の事情は外部の人には一寸判りにくい所があると思います。一番重要なことは、描く前の心の在り方だ。

目前にあるものが美に輝く時、それは神秘の世界から現れた贈物のように見える。洲之内氏が私の画を「この世のものとは思われない趣さえある」と言う時、私の気持ちを他の方向から感知していると思う。私の考えでは、「この世のものとは思われない」のは目前の現実で、目前にある現実が、「この世のものとは思われない」ような美に輝いている事実です。

===================================
 
 などを読むと、ちゃんと理解しているか自信はないが、なんとなく分かった気にさせるのがすごい。

 実際に絵を見てみると、私の好きな緑色がとにかくきれいである。それと白の表現もすごいと思わせる。紙袋の白、キャラメルの包み紙の白、テーブルの白、卵の白などの質感から長谷川の感動が伝わってくる。

長谷川潾二郎

 構図、特に静物画の構図もケレン味の無い無駄な要素を省いた、それでいて計算しつくしたのだろうという構図が心地よい。

 展示は6月13日(日)までだから機会があれば観に出かけることをお勧めする。そしてせっかく湘南を通り越して平塚まで来たのだから何かおいしいものを食べて帰ろうという向きには、橋を渡って茅ヶ崎に戻り、「ととや山口」の文明の薫り高い繊細な魚料理がおすすめだ。 


 
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国立西洋美術館 古代ローマ帝国の遺産

 上野公園のいちょうがまっ黄色に色づいて青空に映えていた。

上野公園のいちょう

 国立西洋美術館50周年記念として古代ローマ帝国の遺産展をやっている。九月中旬からやっていて前売り券まで買ってあったのに結局展示の終わる1週間前の先週やっと見に行った。

 これは古代ローマ帝国を創建したアウグストゥスの時代を主題とした展示会である。アウグストゥスは現代の言い方でいうと紀元前63年9月23日に生まれ紀元14年8月19日に亡くなっている。従ってキリスト教の影響の少ない文明の片鱗を見せてくれる。

 展示物はベスビオ火山の噴火で埋もれてしまったポンペイやヘルクラネウムの遺物が中心になっている。噴火は紀元79年で、発掘が始まったのが中世の呪縛が解けた18世紀以降。これが幸いし、破壊を免れた遺物は一大文明の様相を見せてくれる。

 明るくのびのびとした彫刻や絵画、現代と変わらない金属加工の技術、デザイン。2000年前の豊かな世界に驚く。

 目玉としては2300年前に製作されたブロンズ像アレッツオのミネルバ。オリジナルは2400年前にギリシャで作られたとのこと。ブロンズは後世、武器に鋳直されることが多かったためほとんど残っていない中で貴重な作品。

アレッツオのミネルバ


 1000年にも及ぶヨーロッパ中世の暗黒時代に破壊されることもなく現代に伝えられた遺産の数々、感じるところは多い。展示は今週末まで。




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岸田劉生展

 岸田劉生没後80年展を損保ジャパン東郷青児美術館へ見に行った。この美術館は新宿の旧浄水場跡に建てられた損保ジャパン本社ビルの42階にある。

損保ジャパン本社ビル

 そういえば昔、車の任意保険は損保ジャパンの前身、安田火災海上保険だった。私の支払った保険金でこんなビルを建て、ゴッホのひまわりを53億円で買ったのかと思うと気持ちは複雑である。

 日本人なら必ず岸田劉生の麗子肖像を教科書で見たことがあるはずだ。りんごのような頬、大きな丸い目、日焼けした肌、必ずしも幼女のかわいらしさを表現したものではない。

ジュニア版パンフレット

 そんな劉生の肖像画を主に80点の作品が集められていて、ゴッホの作風を模した初期の作品から中国の古典に影響を受けたグロテスクの味と呼ばれている作品まで画風の変遷が分かるように展示してある。

 劉生の言葉にある

 「デユーラーからファンアイクまでの初期ルネッサンスの平面的で影の少ない輪郭のはっきりした固い画面を好んだが、それは物質の美を描く必要からで影を避け、、、」

 は、絵画の最も重要な要素は光と影だと思っていた私には新鮮であった。

 岸田劉生の画風の変遷は彼の西洋絵画を理解していく過程を明確に示しているように見える。私にとってその過程を追い、理解することが絵画を理解する大きな助けになりそうだ。

 それに売店では子供向けに没後80年岸田劉生肖像画をこえてというジュニア版パンフレットを売っている。これは、ひらがなの多い文章、大きな活字で漫画まであり、とても分かりやすく出来ている。もちろん買ってきたのだが、さらに理解する大きな助けになりそうだ。

 



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林雄三 針金細工展

 かなり昔の話になるが、小学校2年生くらいのときだったと思う。学校からの帰り道、2時間も道草をして、ひどくしかられた覚えがある。一体何をしていたのだと言われたが、針金細工をずっと見ていたのである、2時間も。

 道端に防水シートを敷いて、商品なのだろう、針金細工のゴム鉄砲が20丁も並べてある。クランクを利用して輪ゴムを何本も装填できるようになっていて、引き金を引くたびに一本ずつ輪ゴムが飛んでいく、連発銃だ。

 そのメカニズムにも興味はあったが、2時間も飽きもせずそこにいたのは、今で言う実演販売だったからである。防水シートの上にアグラをかいて座っているおじさんのペンチが動くたびに針金が鉄砲になっていく。その無造作な動きが作る、精密な機構に驚嘆していたのだ。

 家に帰って早速やったのは針金を曲げてゴム鉄砲を作ること。単発銃は出来たのだが、その後おじさんから連発銃を買った記憶があるから、自分で作った鉄砲はあまり気に入らなかったのだろう。

 先週、東京の恵比寿ガーデンプレイスに映画を見に出かけた。時間があったので恵比寿三越の中をうろうろしていたら、針金細工の実演をしている。林雄三さんという方で、有名な方らしい。

 作品も沢山展示されていて、金線や銀線を使った細工は本当に繊細で美しい。

林雄三、モービル

 これが林雄三、針金細工展を知らせる絵葉書。カタツムリが代表作の一つかなのかもしれない。

林雄三、カタツムリ

 それでもやはり一番気になったのが実演の方である。ちょうど見ているときはアルファベットでネームプレートを作っていたが、やはり無造作な動きが精密な造形を作り上げていく。釘付けになってしまった。

 家に帰ってきてやることは決まっている。家には真鍮ワイヤーも、ビー球もある。もちろんペンチやニッパーもあるのだから、表現したいものがあるなら、何でも作れる。

 林さんのカタツムリ、単純化された線が美しい。しかし、、、、余分な要素はないだろうか。もっと単純化できるのではないか。より単純化できれば、より美しくなるはずだ。贅肉をそぎ落としたカタツムリを作ってみよう。シンプル・イズ・ザ・ベストなのだ。






佐久間、カタツムリ

 「どうだ、シンプルになっただろう。玄関にでも飾っとくか」と鼻高々な私。
 「雄君が作ったことにしておきましょ」と冷静な美術評論家。

 雄太君はお隣の、とても元気な小学2年生である。今度、林雄三の作品を見かけることがあったらカタツムリを買ってこようと思っている。



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国立新美術館、モディリアーニ展

 東京、六本木にある国立新美術館でモディリアーニ展が開催されている。金曜日の夜は8時まで開いていて、この時間帯は人も少なく、ゆっくり見ることが出来る。そんなわけで、夕方に六本木まで出かけた。

 モディリアーニは20世紀初頭に活躍した、ピカソやマティスと同時代の画家だが、早く亡くなったこともあり、評価は低い。それでも美術館展などでは必ずパリ派の一人としてユトリロのそばなどに展示されることが多かった。しかし最近になって再評価する動きがあり、展覧会が頻繁に行われている。

 彼はもともと彫刻家を目指していて、彫刻家ブランクーシの影響を受けている。最近の映画「モンテーニュ通りのカフェ」で効果的に使われた彫刻、接吻の作者がブランクーシだが、単純化された線はアフリカ彫刻の影響を強く受けている。

接吻、ブランクーシ:フィラデルフィア展

 従って、モディリアーニもアフリカ芸術の影響を強く受けていて、2001年のMoMA展に展示されていた人間の頭部の彫刻は、縦に引き伸ばされていてアフリカの仮面を思わせるものであった。

頭像、モディリアーニ:MoMA展

 今回の展示ではカリアテッドと題された作品が10点以上展示されている。彫刻のための下絵のようなものだが、今まで良く見ているモディリアーニとは違い、単純で力強い線が心地よい。

カリアテッド、モディリアーニ:モディリアーニ展


 その後、健康を害したモディリアーニは彫刻を諦め、絵画に向かった。その絵画にもアフリカ彫刻の影響を残していて、単純化された線と表情の無い仮面のような顔は強烈な視覚効果を狙ったものである。

ジャンヌ・エピュテルヌ、モディリアーニ:モディリアーニ展

 開館して1年半のこの国立新美術館、4回目の訪問になる。そのたびに思うのだが、この美術館、地下鉄直結というアクセスが良いのが気に入っている。そして一番良いのはとても見やすいということだ。ひとつの作品を遠くから見て、近くから見てということができる。広さが広いこともあるが、展示に工夫をしているからかもしれない。もしかすると金曜日の夜に出かけるからかもしれないのだが、、、、




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ウルビーノのヴィーナス

 東京上野の国立西洋美術館で「古代からルネサンス、美の女神の系譜」と題した展示会が開催されている。ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」が目玉だ。

 西欧で美の女神というとギリシャのアフロディテであり、これがローマではビーナスと呼ばれていた。ギリシャ、ローマの神々は自由奔放でまったく楽しいのだが、キリスト教の浸透に伴って異教の神として駆逐されていく。再び復活するのは中世が終わり、ルネッサンスになってからである。したがって今回の展示会も古代のビーナスの展示から急にルネッサンスのビーナスに飛ぶことになる。

 この、「時代の不連続性」が興味深いものを見せてくれる。会場の中ほどに、2000年前と500年前に作られた高さ30センチくらいのビーナスのブロンズ像が2体、並んで展示されている。ところがこの2体、受ける印象がかなり違う。この1500年と言う時間の差が技術の差となり、より繊細な表現が可能になっているが、同時に形式化も進んでしまったようだ。古代のビーナスは、制限された技術の中でいかに表現するかという意志を、より明確に感じることが出来る。制限有るところに芸術が生まれるということか。

 今回の展示のハイライトはやはり「ウルビーノのヴィーナス」。これ以降の裸体画の源流となった作品である。この作品は単にエポックメーキングな作品と言うだけではなく、その美しさも際立っている。ティツィアーノの作品としては、すぐ横にもう一点「キューピッド、犬、ウズラを伴うヴィーナス」が展示されているが、やはり印象は薄い。

ウルビーノのヴィーナス

 今回の展示で、他に気に入った作品はカラッチの「ヴィーナスとサテュロス、小サテュロス、プットー」で、背を向けたヴィーナスとサテュロスの明暗の対比が面白い。

ヴィーナスとサテュロス、小サテュロス、プットー

 キリスト教にとって異教であったビーナスをテーマにした展示会であるため、宗教色のある作品は無い。より自由な発想で表現が可能なためか、変化に富んだ作品が多展示されていて楽しめる。5月18日までの公開だから連休の一日を上野まで出かけてみるのもお勧めだ。



ウルビーノのヴィーナス

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フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展

 試験勉強もぎりぎりにならないと身が入らなかったし、社会人になってからも納期が迫ってこないとぜんぜんやる気が起こらなかった。それでも最終的には辻褄を合わせてしまっていたので、そんな生活態度が身についてしまった。

 国立新美術館のフェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展を見に行った。9月からやっている展示なのだが来週までと言うことで重い腰を上げたわけだ。例によって金曜日の夜なのだが今回は大変な混雑である。

 目的はフェルメールだったのだが、オランダの風俗画が多数展示されていてこれらも面白い。日本で言うと関が原の戦いの頃のオランダの庶民の生活を見ることができるのだが、宗教の匂いが無いので素直に楽しめる。

 風俗画なので人物が主題で、その表情や衣服に興味がいくが、その他に前景や背景に描かれた静物の質感の表現力に驚かさせられる。石のレリーフや兎や鳥、籠や金属の鍋のテクスチャーが見事に描き分けられている。

 さてフェルメールの「牛乳を注ぐ女」だ。会場の一区画が専用の展示スペースになっているのだがすごい人だかりだ。3列に並んでのろのろと進むのだが15分並んで、見るのは30秒。それでも世界に30数点しかないと言うフェルメールを見る事ができたのでよしとする。
フェルメールの「牛乳を注ぐ女」

 残念ながら今週末までであるがお勧めの展示会である。本当は9月ごろに行って紹介できればよかったのだが最近とみに腰が重くなっている。もっとフットワークを軽くしないと精神までメタボリックになってしまいそうだ。



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フィラデルフィア美術館展

 米国のフィラデルフィア美術館といえばロッキーが駆け上がった階段で有名だが、ロッキー3で使われたロッキーのブロンズ像が庭園に飾られていることでも有名だ。そんなフィラデルフィア美術館の所蔵品77点が東京都美術館で12月24日まで展示されている。

 今回の展覧会が「印象派と20世紀の美術」とサブタイトルがあるようにフィラデルフィア美術館は印象派の作品が充実している。人間の視覚特性を利用した印象派は好きなジャンルだ。

 展示会の第一章は写実主義でマネがここに分類されている。今回の展示は「キアサージ号とアラバマ号の海戦」だが、やはり海の表現が良い。
エドアール・マネ「キアサージ号とアラバマ号の海戦」 

 第二章は「印象派とポスト印象派ー光から造形へ」と言うことでドガに始まりモネ、ルノアールと有名どころが続く。中でもルノアールは「ルグラン嬢の肖像」「ルノワール夫人の肖像」「大きな浴女」等が展示されていて充実している。ところでルノワール夫人だが、誰かに似ているとずっと思っていたのだが、本物を見て分かった、レニー・ゼウィルガー。彼女をちょっと上品にするとそっくりだ。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「ルノワール夫人の肖像」 

 第三章は「キュビズムとエコール・ド・パリー20世紀美術の展開」ここもおなじみのピカソ、ブラックからモディリアーニ、ユトリロまでが展示されている。

 そのピカソだが、今回5点展示されていて、そのうちの一点は「三人の音楽師」。実は彼が描いた「三人の音楽師」は二枚存在していて、2001年に来たニューヨーク近代美術館名作展で見ていたのだけれど、今回もう一枚の方を見ることができた。
パブロ・ピカソ「三人の音楽師」 

これはMoMA展で見たパブロ・ピカソ「三人の音楽師」
ニューヨーク近代美術館パブロ・ピカソ「三人の音楽師」 

 第四章は「シュルレアリスムと夢ー不可視の風景」でキリコ、マグリット、ミロと楽しめる。

 第五章はアメリカ美術で気に入ったのはシーラーの「ヨットとヨットレース」くらいのものか。彼の作品は、描かれたかれた対象が何であるかを認識するために必要な最小限の情報だけを残し、抽象化されている。好きなタイプである。
チャールズ・シーラー「ヨットとヨットレース」 


 美術館は疲れる。人ごみの中を2時間も歩き回るのだから当たり前か。こんなことではいけないとロッキーを見習って上野駅まで駆け足とも思ったのだが、もうグロッキー、、、、、Gonna Fly Now



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女性印象派画家、ベルト・モリゾ展

 2007年はじめに見たオルセー美術館展の目玉の一つがマネの「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」だった。入場券の写真やカタログの表紙の写真になっていたので覚えている人も多いと思う。

 ベルト・モリゾは19世紀後半に活躍した女性画家である。裕福な家庭に生まれ姉達と共にコローなど当時の一流画家から絵画の教育を受けた彼女は印象派の活動に貢献したことでも知られている。

 彼女は画家として多くの作品を残しただけではなく、マネ、モネ、ドガ、ルノワール、セザンヌ等とも交流があり、彼らのモデルとしてキャンバスに残されている。「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」はその例である。

 そのベルト・モリゾの作品展が東京新宿にある損保ジャパン東郷青児美術館で開かれている。新宿伊勢丹のイタリアウイークに出かけたついでに見てきた。

 印象派の絵画はそれまでの写実主義とは異なり、室内でじっくり描くのではなく、屋外で光や動きの一瞬を捉えようとしている。当然短時間で描くことになり、タッチも荒いし、省略された表現も多い。

 今回の展覧会の中で一番気に入ったのが「砂遊び」。5歳になった彼女の娘ジュリーが砂場で遊ぶ姿を描いたものだ。丸くてふわふわした感じが可愛い。
砂遊び

 この後は池袋まで行って読売日本交響楽団のコンサートだ。東京に出てくるとどうも強行軍になっていけない。


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日展100年

 六本木の国立新美術館でやっている日展100年を、混雑を避けて金曜日の夜、見に行った。金曜日は夜八時まで開館している。この日展100年は日展の前身、文展から現在までの選りすぐりの作品を展示してある。既に亡くなった方の作品に限定されているが、近代の日本の美術作品をまとめてみることができるいい機会だ。

 会場に入るとまず目に付いたのが上村松園の「花がたみ」。高さ2メートルにもなる大きな画面に、うつろな目をして、口を半分開いた女性が描かれている。謡曲を題材にした作品との事だが、紅葉の散るなかにあでやかな衣装が印象的である。

 そのすぐ横にあった下村観山の「木の間の秋」をみてもそれらの装飾性が日本画のひとつの特徴と理解できる。

 その他にも屏風画では見る方向により大きく印象が変わり、日本の芸術の表現方法のバリエーションの広さを感じた。

 19世紀、日本の絵画が西欧の画家に大きな影響を与え、ジャポニズムとい呼ばれていたらしいが、この展覧会を観るとその理由が良くわかる気がする。西欧の表現とは異質な題材、表現方法が良く見て取れる。

 残念ながら9月3日までなのでこの週末に行って見ることをお奨めする。展示作品は期間中に入れ替えがあったということで図録に収められているものより少ない。図録も購入し、六本木の芋侍で食事をしてから千鳥足で帰ってきた。



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キスリング展

スペインの女 最初にキスリングはいいなあと感じたのは二年前の2005年、ホテルオークラ東京であった「ヨーロッパと日本 きらめく女性たち展」のときだ。「スペインの女」の大きく描かれた、寂しそうな目が気に入っていた。

女道化師 その後箱根芦ノ湖美術館でも見たが、一番印象に残っているのが伊豆半島の温泉地、伊東にある池田20世紀美術館の「女道化師」。等身大ほどの大きさの絵だが、やはり女道化師の大きな憂いを含んだ目が印象的である。

黒いブラウスの若い女性 1928 2006年2月東京の日本橋三越で開かれたベオグラード国立美術館所蔵フランス近代絵画展にもキスリングが2枚来ていたようだが、図録が手元にあるだけで残念ながら見ていない。これは「黒いブラウスの若い女性」

赤いセーターと青いスカーフを纏ったモンパルナスのキキ そして今年2007年、ジュネーブのプティ・パレ美術館の収蔵品を中心としたキスリング展が日本を巡回している。横浜では8月26日までそごう美術館で見ることができる。その後福岡に行くようだが、10月には東京に戻ってくる。

 キスリングは1891年にポーランドで生まれたエコール・ド・パリ(パリ派)の画家。ピカソ、ブラックらとも親交があったようだが、キュビスムとは別の独自の世界を作り上げている。その彼の作品が20代始めにパリに出てきてすぐの頃から62歳でなくなるまでを時系列に展示してある。

 順に見ていくと30代から独自の画風を確立しているのがわかる。たとえばセザンヌの影響下にあるといわれていた頃の「水差しと果物のある静物」(cat3)と「果物のある静物」(cat26)を比べると色使いを重視する方向に変わってきているのが見て取れる。

 また、この頃からの女性像の目が変わってきている。大きく描かれた目はこちらを見ていないことが多く、宙をさまよっている。人間の感覚は目に強く反応するらしいので、独特の印象を与えることに成功している。
オランダ娘 cat30 イヴ cat37 おさげ髪の少女 cat39


 このキスリング展、大分前に見たのだが、明日で横浜での公開が終わってしまうので、とりあえず上げておく。また日中は35度になるようだが、デパートの中は涼しいので、もう一度横浜そごうまで出かけてみようかと思っている。

追記:箱根芦ノ湖美術館は2006年に閉館し、東京都港区南青山に青山ユニマット美術館として展示を続けている。


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大回顧展モネ

 六本木周辺の変貌はすざましい。通りを我が物に歩くのは今や若者ではなく、年配の女性の団体だ。まあお元気でよろしいのだが。

 その六本木に新しくできた国立新美術館で開催中の「大回顧展モネ」の入場者数が2ヶ月で40万人を越した。この間のレオナルド・ダ・ヴィンチの傑作「受胎告知」を中心とする特別展が2ヶ月で50万人だったらしいからそれに匹敵する。混雑するだろうと言うことで金曜日の夕方でかけた。金曜日は夜8時まで開館している。

 夕方6時に着いたがチケット売り場にも、展示会場の入り口にも列が無い。というより人気が無い。やはりこの時間帯が正解のようだ。さすがに6時半を過ぎるとオフィス帰りの女性が増えて混雑してきたがそれでもゆったりと見ることができる。

 モネは日本で人気があるが、モネも日本から大きく影響を受けている。モネの言葉に次のようなものがある。

 「作品の源泉をどうしても知りたいと言うのならそのひとつとして、昔の日本人たちと結び付けて欲しい。彼らの稀に見る洗練された趣味は、いつも私を魅了してきた。影によって存在を、断片によって全体を暗示するその美学は、私の共感を呼ぶものだった。」

 と言うわけで日本人の感性にあうのかもしれない。

 モネの絵の特徴として、絵の具をカンバスの上で混色するようなところがあり、それも完全には混ざっていない。網膜の中で、脳の中でイメージが完成するようなところがある。そのためかモネの絵は近くで見ると良くわからないが、離れてみると絵になる。十分離れてみるためにはこのくらいの混雑度で無ければならない。

 今回の展示会にはモネが100点近く世界中から集められている。よくもまあこんなに集めたものだと思う。この機会にご覧になることをお勧めする、金曜日の夜にでも、、、、


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久保田一竹美術館

 富士五湖の一つ、河口湖の北岸に近いところに久保田一竹美術館がある。江戸時代初期にこつ然とその技術が失われてしまった「辻が花染め」を現代に復活させた久保田一竹の作品が展示してある。
 美術館は樹齢1000年といわれる太い檜材を16本使ったやぐら構造をしている。その美術館の壁一面にかけられた一竹辻が花は色の変化の具合、テクスチャー感がすばらしい。

 友禅だとたしかにきれいだが完全にコントロールされた美しさである。ところが「辻が花染め」は糸をほどいてみるまで色の変化、しわの具合など仕上がり具合がわからない。窯から出すまで仕上がりのわからない陶芸にも通じるところがあるのではないか。「辻が花染め」は正確にコントロールされた中のランダムさに美しさを感じるのだろう。

 それに、表現力の豊かさもさることながら、気の遠くなるような絞りの作業に圧倒される。「辻が花染め」の作業工程をビデオで流しているので是非ごらんになるといい。すさまじいとしか言いようのない作業だ。

 久保田一竹は40歳の時にこの「辻が花染め」の復元に取り組み、赤貧の中60歳の時やっと満足できる作品ができたという。60歳から精力的に作品を作り始めた久保田一竹は70歳を前にしてパリ、ニューヨーク、ダラスで「一竹辻が花展」を開いている。

 60歳で定年だなんて、まだまだこれからだと自分に鞭を入れた一日だった。


脚注:まだまだ60歳までだいぶあります。



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レオナルド・ダ・ビンチ、天才の実像 展

受胎告知

 東京国立博物館で3月20日から6月17日まで「天才の実像」としてレオナルド・ダ・ビンチの特別展が開催されている。今回の目玉は日本で初めて展示される「受胎告知」

 モナリザ以来の混雑になろうというので、この土曜日の朝早く、のつもりであったが十時半に上野の国立博物館に着いた。入場券を買う窓口が混むのでいつもの通り上野駅の構内で入場券を購入したのは言うまでもない。

 国立博物館での美術展は奥にある平成館で開催されることが多いが、今回は本館に「受胎告知」の絵を一枚だけ展示、その他を平成館で展示しているとのこと。ますます期待が高まるし、いったい何時間待ちだろうと心配にもなる。

 上野公園を小走りに抜けて国立博物館に到着したが、チケット売り場に列がない。上野駅のチケット売り場の方が混んでいたくらいだ。そして本館入り口にはたしかに列があったが20分待ちだと告げられる。たった20分か。早く来たかいがあったというものだ。

 入り口で手荷物検査をされて中にはいるとやはり混雑しているが、横浜美術館での「白貂を抱く貴婦人」よりもじっくり見ることができた。やはり宗教的モチーフの「受胎告知」は日本人にとってそれほどインパクトがないのかもしれない。

 じっくり見るには少し手前の手すりにしがみついて見るのがよさそう。最前列を通る列に並んでしまうとトコロテンのごとく押し出されてしまうのでご注意を。

楕円コンパス 平成館に展示されていたのは天才としてのレオナルド・ダ・ビンチの足跡。500年前にこのような人間がいたのかと驚くばかりである。たとえば楕円を書くためのコンパスが展示してあり、説明が大画面の液晶テレビに映っているが、どうして楕円がかけるのかよくわからない。じっくり考えてみることにする。

 売店で分厚いカタログを買ったのは当然だが、「ダ・ビンチ7つの法則」という文庫本も買ってしまった。「本書は、全能の天才レオナルド・ダ・ビンチの学習方法と知性の開発方法の原理を抽出し、それを私たちの潜在能力を引き出すための刺激や指針として、、、、、、」という宣伝文句につられたわけである。ハウツーものに弱いというか、アルジャーノン症候群というべきか。

 朝早く国立博物館に着いたので比較的ゆっくりと見ることができた。早起きは三文の得と口笛を吹きながら平成館を後にしたのだが、ひょいと本館の入り口を見ると列がない、十人くらい入り口にたむろしているだけ。どうも一番混んでいるときに入館したらしい、まあ活気があってよかったということにしておく。


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「人間の奥行き」ヴァンジ作品展2000-2006

 東京方面から東名高速道路を西に走る。鮎沢パーキングエリアを過ぎると天気が良い日には富士山が真正面に見える。御殿場や裾野は東京からでも100km圏内、ドライブを楽しむには良いエリアだ。

 遊ぶ場所もいろいろあって、お花見は御殿場高原ビールだし、御殿場プレミアム・アウトレットは国内のアウトレットの中では楽しめるほうだ。天気がよければ山中湖や河口湖など富士五湖へ行ってもよい。

 このエリアで最近行ったのが裾野インターチェンジの近くにあるクレマチスの丘。あの超優良企業であるスルガ銀行の系列文化施設だ。

 このクレマチスの丘にはビュフェ美術館、ヴァンジ彫刻美術館、木村圭吾さくら美術館 、井上靖文学館や クレマチスホワイトガーデンなどがあって一日楽しめる。

 特にお勧めなのが併設されたレストラン、マンジャ・ペッシェ。東京にあるイタリアン、アクアパッツアの姉妹店で、選び抜かれた地元の素材がおいしい。残念ながら夕食には時間が合わないので、ランチになってしまうが、ちゃんとしたものが出てくる。大人気なので予約しておく必要がある。

 どうも食い気の話になってしまうが、美術館ももちろん楽しめる。特にヴァンジ彫刻美術館がお気に入りだ。ジュリアーノ・ヴァンジの彫刻を集めた美術館としては世界で唯一らしい。

 そのヴァンジの最近の作品を集めた展示会が東京九段のイタリア文化会館で開かれている。17点の展示と小規模ではあるが、最近の作風が楽しめる。色大理石の組み合わせなど人目を引く工夫もされているが、私としては純白の大理石を使った作品が好みだ。

 このイタリア文化会館、全体が赤い建物で、景観論争に発展した建物である。一度見にいかれて感想を聞かせていただけるとありがたい。個人的な意見としては、彩度を落とした落ち着いた美しい赤だと思うのだが。

 「人間の奥行き」ヴァンジ作品展2000-2006と題されたこの展示会は4月30日までイタリア文化会館で見ることができる。これらの作品は9月以降ヴァンジ彫刻美術館で展示されるので、イタリア文化会館で見ることのできなかった人は、秋晴れの一日クレマチスの丘まで出かけてみることをお勧めする。


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