熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「ハート・ロッカー」(原題:The hurt locker)

2010年03月27日 | Weblog
さて、これは所謂「戦争」なのか。アメリカの兵士たちは誰と戦っているのか。この戦いに勝ち負けがあるものなのか。勝ち負けが無いとすれば、いつ終わるのか。

物語の舞台は2004年のバグダッドで、主人公は米国陸軍の爆発物処理班のひとつ。爆発物が仕掛けられているとの情報を基に当該爆発物を探し出して無力化するのが彼等の任務である。バグダッドに何故米軍が駐留しているのかと言えば、2003年3月に米国が当時のイラク大統領であるフセイン大統領と主要閣僚の国外退去を求めてイラクに対して攻撃を開始し、同年5月に国連安保理で米国と英国によるイラクの統治権限が承認されたからである。つまり、米国はイラクの治安維持に関して責任があったということだ。では爆弾はどのような目的で誰によって仕掛けられていたのだろうか。

多少時代を遡れば、2001年9月の同時多発テロに注目しないわけにはいかない。この犯人グループがイスラム教の過激派組織のひとつであるタリバンに属しているとされるのである。そのタリバンを支援しているのがイラクやアフガニスタンであり、しかもイラクは大量破壊兵器を保有している疑いがある、ということだった。しかし、イラクから大量破壊兵器は発見されていない。欧米諸国に対してテロ攻撃を続けるイスラム過激派勢力は、この作品の舞台となっている2004年以降も一向に駆逐される気配はなく、今もテロ攻撃は続いている。

爆弾テロは、その爆発の現場にいる人々を無差別に殺傷する。特定の殺傷目標があるのではなく、テロそのものが目的と言える。一般市民の生活の場であるところで爆弾が爆発すれば、そこにいる駐留軍関係者も死傷するだろうが、軍とは無関係の市民も死傷する。単純に国連対イラクというような図式で事態を見ることはできないということだ。では、何のためにテロが行われるのか。それが少なくとも日本で見聞する報道からは見えてこない。

そして冒頭の問いに戻るのである。今、イラクで起こっているのは「戦争」なのか。駐留している米軍は誰と何のために戦っているのか。

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