二上山卯月曇に聳えをり
背伸びせよ大和三山夏霞
老鶯に守られゐしか古墳群
古墳群いにしへ人の汗想ふ
人の世を嗤ふが如く行々子
青蘆を煽る背びれの見え隠れ
黒猫の眼のらんらんと木下闇
過日、東に大和三山、西に二上山を控え、奈良盆地の一角を占める馬見丘陵公園へ吟行に出かけた。この一帯には大小様々な古墳が残っており、この公園の近辺に13基ある。この広大な自然環境を守るために公園としたものである。
新緑の真只中、鶯の谷渡りが素晴らしかった。
写真は二上山であるが、二峰が重なっていて二上山らしくない。
背伸びせよ大和三山夏霞
老鶯に守られゐしか古墳群
古墳群いにしへ人の汗想ふ
人の世を嗤ふが如く行々子
青蘆を煽る背びれの見え隠れ
黒猫の眼のらんらんと木下闇
過日、東に大和三山、西に二上山を控え、奈良盆地の一角を占める馬見丘陵公園へ吟行に出かけた。この一帯には大小様々な古墳が残っており、この公園の近辺に13基ある。この広大な自然環境を守るために公園としたものである。
新緑の真只中、鶯の谷渡りが素晴らしかった。
写真は二上山であるが、二峰が重なっていて二上山らしくない。
残念ながらまだ馬見丘陵公園は行ったことはありませんが、お写真から拝見しますと二上山の特徴ある形と古墳群に囲まれ、たちまち古代の世界に入って行けそうですね。作者の感動が伝わってくる句です。やはり二上山が印象深いです。
老鶯に守られゐしか古墳群
鶯がよく啼いていたのが聞こえた。今の時期家の周りでも聞こえ、夕方になるとかなりうまくなった声を聞いているとほっとします。
作者は老鶯たちがまるで古墳を守るかのように周囲で啼いている。実にやさしい、光景を愛でる気持ちが溢れています。
黒猫の眼のらんらんと木下闇
黒猫が木下闇で眼だけが金色でらんらんとこちらの動きを読まんとしている。緊張感が伝わる一瞬を詠まれた作者の観察眼に敬服します。
3句も取り上げて下さり、有難うございます。
二上山の左手に葛城山と金剛山も見えたのですが、かなり遠方なので、やはり二上山が印象に残りました。丁度曇っていたので、卯月曇を使ってみました。
大きな古墳は樹木が鬱蒼と茂っており、踏みいることはできませんが、鶯が住み着いているのか谷渡りを度々耳にしました。この時期になると、鳴き方も上達しているようです。
この公園では猫は嫌われ者です。猫も心得ているのか私が近くを通ると、睨みつけられました。
☆背伸びせよ大和三山夏霞
何年か前に訪れた奈良は甘樫の山から眺めた大和三山を思い浮かべました。 四捨五入さんの眺められた三山は別の場所からのものでしょうが、なだらかな大和三山に背伸びせよと詠まれている気持ちは分る気がします。
☆人の世を嗤ふが如く行々子
ヨシキリの鳴き声を「人の世を嗤うが如く」と詠まれた四捨五入さんに、現代の世に対する風刺を感じました。
二上山には行ったことはありませんが、お写真を拝見し、少し曇っているかな、、て云う感じですね。それを今の時期の「卯月曇り」とされたところが素晴らしいと思いました。一度使って詠んでみたいです。
老鶯に守られゐしか古墳群
近くに13基もの古墳があるということで、素晴らしいところですね。「老鶯」の谷渡りを聞きながらの吟行、素晴らしかったですね。
本当にお久しぶりです。よく帰ってきて下さいました。大変うれしく思います。どうぞこれからも厳しいご講評を頂きたくお待ちしています。
拙2句にコメント下さり有難うございます。
小生も甘樫の山へ登ったことがあります。特徴のある畝傍山が近くに見えたことを覚えています。今回は古墳の頂上から見たのですが、樹木の上に辛うじて見える程度でしたので、この句となりました。自分に背伸びせよと命じている意味もあります。
公園内に大きな池があり、大葭切がわめくように啼いていました。聞きようによっては人をばかにしているようにも聞こえますので詠んでみました。一体どうなっているんだと叫びたいような世相です。大葭切の鳴き声は威勢がよく、本当は好きです。
拙2句にコメント下さり有難うございます。
吟行へ行く電車の中で、今日使えそうな季語を探していましたら、「卯月」が目に入りました。例句に「卯月曇」があり、気に入りましたので使ってみたわけです。都合よくこの時だけ曇っていました。
古墳を覆う森ではからすや他の鳥も啼いていますが、鶯の鳴き声が圧倒的に派手でした。1600年も前から啼いていたのでしょう。
畝傍山、耳成山、香具山の大和三山は山と言うにはあまりにも低い山。しかし、この低い山の頂点から方位を測り都を作ったと言う奈良盆地は、この三山が低きが故に悠久の光景を見せていると思うのは小生だけでしょうか?上五の指示形、「背伸びせよ」との語句が季語の「夏霞」と大変良く調和し、ゆったりと悠久の歴史に包まれた光景を十分に思わせ秀句ですね!。
☆古墳群いにしへ人の汗想ふ
因みに、世界一の規模の仁徳天皇稜と言われている大仙古墳は、竹中工務店の調査によれば現代の土木機械を駆使しても数年はかかるとの事。古墳の上に奈良と言う土地があるほどの場所では、人力で土木工事を行った古人の富と権力、我慢強さは驚くべきですね!。その土地、その場所に立って見て初めて分かる感動です。
☆青蘆を煽る背びれの見え隠れ
池を泳ぐ鯉にとっても今の時季が産卵期でもあり、一番活発な頃ですね!。ゆったりとして、長閑な光景がとても良く想われ、穏やかな中にも動きが感じられて素敵な一句です。
低いがゆえに夏霞より上に背伸びせよと、奈良盆地の風景が目の当たりに見えるようです。
古墳群いにしへ人の汗想ふ
さぞ多くの平民の汗が流れたのでしょうね。文化遺産のほとんどが汗と涙の結晶です。
二上山は金剛山系の北の端、生駒山系の南端の間を抜けると奈良盆地から大阪河内平野に出ます。古市から堺に向けて突如として平野が開け、巨大な古墳だけがあちらこちらに見えた古代の風景を想像しております。
たろう様の詳しい解説とご評価に感謝しております。大和三山が500メートルの高さだったら、今ほど親しまれることは無かったかもしれませんね。
大きな古墳を見ていると、その昔の豪族の権力の凄さを感じます。その対極で、その下で汗を流した農民たちの悲惨さも思わずにいられません。福島原発事故を見ていると、あまり変わっていない気もします。
青蘆の句に動きを感じていただき、うれしく思います。なるべく、動作を詠むようにしています。
拙2句にコメント下さり有難うございます。
白状すれば、大和三山は低くてよく見えないために、歴史的背景も知らずに「背伸びせよ」と詠んでしまったわけです。夏霞のためによく見えないと解釈して下さると、詩的な句に見え、うれしくなりました。
馬見丘陵で最大の古墳は巣山古墳ですが、仰せのように古市や堺には比較にならない巨大古墳がありますね。権力にも格差があったことがよくわかります。文化遺産を見るときはそれが作られた背景を理解する必要を感じました。