1000回の寒行を迎える豊嶋英雄住職
日高川町玄子、浄土宗円通寺の豊嶋英雄住職(62)は毎年恒例の寒行を5日から始め、今日7日に1000回を迎える。毎年寒の入り(6日の年もある)から2月2日まで行う寒行は27歳の時の昭和57年1月6日から始め、雨や雪など悪天候の日も休むことなく毎晩念仏を唱えながら地域を巡り、数えること999回。節目の1000回に「目標だったがこれで留まることはない。これからも寒行を通じて僧としての姿を求め続けていきたい」と話している。
今年で36年目を迎えた。27歳の時に始めてから期間中、毎晩、網代笠に墨染めの衣、手は手甲(てっこう)、足には脚絆(きゃはん)という格好でひたすら「南無阿弥陀仏」と唱えながら川辺地区を中心に回ってきた。住民らから寄せられた浄財は町の社会福祉協議会をはじめ、各種支援団体、地震や台風の被災地などに寄付している。
円通寺の長男でありながら仏の道を志す意志がなかった豊嶋住職は、大学時代に友人の紹介で奈良県内の二つの寺院を訪れたことがきっかけで仏の道に強い関心を持ち、寺を継ぐことを決意。大学卒業後、実家で父・雄成住職の元、仏道に励んでいたところ、「修行をしたい」という思いが強くなり、26歳の時に早朝に念仏を唱えながら地域を巡ったが、数週間しか続かず断念。そこで大学時代に訪れた奈良県の寺院の住職から「寒行は人目を忍んで夜にするもの」との助言を受け、27歳となった翌年の寒の入りから心改め本格的に寒行を始めた。
これまで35年間の修行では、大雪で凍てつくような寒さのなか、数十センチの積雪の上を歩いて網代傘には5センチ以上も雪が積もる夜も。冷たい雨やみぞれに打たれて濡れねずみのようになったことも多い。真っ暗闇で足元に気付かずに転倒してしばらく身動きがとれなくなったことや道路から転落するなど危険な目にあったことも。巨大なイノシシと遭遇したこともあった。左足にできた動脈瘤や痔、虚血性大腸炎、腰痛など体調が芳しくない年もある。そんな寒行だが、檀家は豊嶋住職が通るのを待ち、檀家以外の町民も手を合わて「頑張って」「体に気をつけて」と声をかけ浄財を預ける。
豊嶋住職は「やり始めた頃は年に1カ月ほどの修行で周りの皆さんが応援してくれてやる気になりました。始めて数年間は寒行を知らない人も多く、暗闇で声が聞こえて慌てふためいて逃げる地域の方がいたり、1月になるとおばけがでるといううわさもありました」と笑う。厳しい修行にも「真っ暗闇で谷底に落ちそうになった瞬間に月明かりが差して助かったこともある。見ず知らずの人との出会いも多く、懸命に追いかけてきた酔っ払いの男性やたまたますれ違っただけの観光客、国家試験に受かりたいと念願成就を願う人、病気・事故などが続くと悩みを抱える人もいて、寒行をしていると日本人に薄れがちと思われている信仰心をひしひしと感じる」とし、「やり始めた頃は早く行が終わってほしいと思う時もありましたが、今では1日でも長く修行を続けていたいと名残惜しい気持ちになる。年々体力的にはきつくなってきますが、自分のやるべき姿を感じられる期間」と話す。
5日の998回目は中津川、千津川方面をめぐり、6日の999回目は平川方面。今日7日の1000回目は土生、千津川方面で念仏を唱える。
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