僕の前世はたぶんオランダ人。

おもしろきこともなき世をおもしろく

れくいえむ(郷静子)

2014年09月14日 | よむ

生まれる間に書かれた本を読むのは何年振りだろう。

し、しかし暗い。

ひたすら暗い。

ある程度の文化知識がないとわかりくい比喩も多く。

読みやすい反面、

引用は難しい。

(海ゆかば、チボー家の人々など)

書かれた時の時代背景を感じる。

まさにレクイエムというか

人の命の消えてゆく様をただただ残酷なまでに

写実的に描いてゆく

蝋燭の消える瞬間を活字化したような本。

突拍子もなく時系列を飛び回る手法が

しだいに死に足を踏み出している節子の

混沌としてゆく思考を描いているようで

その世界に引きづり混まれてゆく。

時系列の飛び回りを繰り返しているうちに

こちらも夢と現の境がなくなってきて、

死の世界に取り込まれてゆく。

「国のため、天皇陛下のため

前線も銃後もなく国民は生命がけで戦ったのだが

戦争に負けても国も天皇もなくなりはしなかった。

いったい戦争とはなんだったのか」

この一文にすべては凝縮されている気がした。


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