生まれる間に書かれた本を読むのは何年振りだろう。
し、しかし暗い。
ひたすら暗い。
ある程度の文化知識がないとわかりくい比喩も多く。
読みやすい反面、
引用は難しい。
(海ゆかば、チボー家の人々など)
書かれた時の時代背景を感じる。
まさにレクイエムというか
人の命の消えてゆく様をただただ残酷なまでに
写実的に描いてゆく
蝋燭の消える瞬間を活字化したような本。
突拍子もなく時系列を飛び回る手法が
しだいに死に足を踏み出している節子の
混沌としてゆく思考を描いているようで
その世界に引きづり混まれてゆく。
時系列の飛び回りを繰り返しているうちに
こちらも夢と現の境がなくなってきて、
死の世界に取り込まれてゆく。
「国のため、天皇陛下のため
前線も銃後もなく国民は生命がけで戦ったのだが
戦争に負けても国も天皇もなくなりはしなかった。
いったい戦争とはなんだったのか」
この一文にすべては凝縮されている気がした。
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