節制の最中でも、無抑制、もっぱら促進のみのものもある

2015年08月07日 | 中庸としての節制(節制論5)

5-1-4-3. 節制の最中でも、無抑制、もっぱら促進のみのものもある
 有害になるから快楽享受を抑制するのである。有害にならないものなら、抑制することはない。食の場合、野菜類は、たらふく無抑制に摂食してもいい。性的快楽でも夫婦間では、原則、無抑制、あるいは、促進のみで夫婦円満であろう。
 食では、美味の快楽とともに、満腹感を充たすという、食の量的充足が問題となる。食の節制・抑制は、美味のものを中心とするが、美味の快楽が問題というよりも、それを満腹するまで食べるという、満腹感の追求が過食を引き起こすのである。満腹感は、美味の高栄養のものでなくても、胃が一杯になることが第一であるから、過食傾向のひとでは、栄養価の低いものを大量にとるのが得策となる。
 性や麻薬の場合は、もっぱらに快楽を追求するが、食では、快楽のみを追求することはできない。したがって、節制も、快でないものも摂取するなかでのこととなる。嘔吐をさそう不味い物も、栄養として摂取すべきこともある。節制しているなかで、そのまずいものは、逆に促進すべきものとなる(節制自体は、快楽(享受)の抑制だから、不快の摂食そのものを促進させるわけではなかろうが)。
 美味しいもの・快楽については抑制に注意がいるが、そうでないものは、過食にさそわれることはないから、おおむね無抑制・促進でよいことになろう。