京都でもほぼ例年通り、先月27日にソメイヨシノ桜が開花しました。
私はこの時期になると「さまざまのこと 思い出す 桜かな」(芭蕉)の句を
懐かしく思い返します。そして必ず訪ねる場所があります。
そこは鴨川に架かる荒神口橋です。(今春は2日、開花し始めたところでした)
最初にここを訪れたのはもう26年も前のことになります。
確かその時も今年と同様、気温が低く桜も開花し始めて間もなかったと思います。
26年前の2月初め、血液のがん「悪性リンパ腫」が見つかって京都府立病院に入院、
3月1日に外科手術で腫瘍を取り除くことができました。
手術後の経過もよく、次のステップ抗がん剤治療が始まるとき、当分は病棟
から出られないことを伝えられました。
当時は「がんイコール死」という知識に支配されている頃でしたから、完治し命が
助かるという見通しも持てない、暗い不安な気持ちで暮らしていました。
主治医からは楽観的な見通しのある説明は一切ありません。
そのような時、特別外出許可をもらって眺めた桜咲く風景がここなのです。
幸いそれから26年間、よく生き延びてきたものだと我ながら自慢に思います。
だから、ここに来るのは桜を鑑賞するというよりも、この一年間、元気で過ごせた
ことを感謝し、今年も頑張ろうという気持ちを新たにするためです。
それから桜の写真を写しに自転車を走らせる私です。
さて、これからの文と写真は桜の花のことに移ります。
前回は「枝垂れ桜」でした。今回は「ソメイヨシノ桜」です。
自宅の近辺を歩けばすぐに目に入ってきます。京都は町中どこでも
桜の名所といっても過言でないと思います。
まずは北野歌舞練場の庭に咲く染井吉野です。
「北野をどり」の開幕に合わせたように3月末には満開です。
一条御前通近くの宥清寺と立本寺のソメイヨシノ桜。
寺之内通堀川東の妙蓮寺と妙願寺の桜。
嵐電沿線の鳴滝付近の桜のトンネル.
竜安寺と平野神社の桜。
染井吉野桜は江戸時代末期、江戸の染井村の植木職人がオオシマサクラと
エドヒガンサクラの交配種として作られたらしい。
それが日本中に普及したのは「成長が早く10年もすれば立派な成木になる」
「花が大きめで花つきが良く見た目が豪華」「花が先に咲き後から葉が出る」
ことらしい。
入学式・年度替わりの区切りの時など、いろいろと節目のころに咲くこと。
パッと咲きパッと散る姿に「武士道の潔さ」を投影して、自己犠牲のシンボル
として多用された等々。
4月早々の冷え込みで満開の花が入学式まで持ちそうで喜ばしい。