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共産教育論(連載第12回)

2018-11-05 | 〆共産教育論

Ⅲ 基礎教育課程

(1)基礎教育課程の概要
 義務保育課程を修了すると、満6歳から基礎教育課程へ就学する。両課程間には入学試験その他による選抜プロセスは一切介在せず、全員一律の自動的な就学である。しかし、満6歳到達時を待って就学するため、一律一斉の入学とはならない。
 基礎教育課程はいわゆる義務教育に相当するもので、公教育の主軸を成すが、伝統的な義務教育が通常、数年程度に限定されているのとは異なり、満6歳から満18歳まで通算13か年に及ぶ点で長期にわたる。これも貨幣経済が廃される共産主義社会では、義無教育サービスに要する金銭コストを考慮する必要がないからである。
 反面、私立の基礎教育課程は認められず、すべて公立である。具体的には、市町村より一段広域の地域圏(郡)が一括して提供する公教育サービスとなる。私立学校は公教育の不備を補充する歴史的役割を負ってきたが、公教育が充実する共産主義社会ではそうした役割を終了するからである。
 共産教育における基礎教育課程の最大の特色は、通信制原則である。すなわち、体育など通信制では提供できない一部科目を除き、インターネットを活用した通信教材を用いて、自宅または指定自習室で学ぶ方式となる。
 こうした自由な方式を採る結果として、基礎教育課程には明確な学年や学級も存在しない。ただし、全13か年は一学齢ごとに区切られた13段階のステップで構成されるが、13か年はあくまでも標準修了年限であって、13年以上かけて修了することもできる柔軟な構成である。
 ただし、各ステップには、各科目ごとに定められた回数の義務的課題提出があり、これをすべて提出しない限り後続ステップには進めないが、所要点数による落第処分はなく、提出し、担当教員の審査を受けることが即進級条件となる。そのようにして全13ステップを修了すると、基礎教育課程修了認定証が発行される。 
 その他、共産教育における基礎教育課程の内容的な特色として、その中期以降に職業教育が必修で導入されることがある。この点で、普通校と職業校とを分離し、早期に人生経路を分けてしまう学歴階級制的な教育システムとは大きく異なる。


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