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軍隊と性暴力/性搾取

2013-05-28 | 時評

軍隊に性暴力/性搾取は付き物である。橋下徹大阪市長があまりにも粗野な形で対照させてみせた在日米軍兵士の性犯罪と旧日本軍の従軍慰安婦制度は、発言者自身の思い込みや両者を切り離そうとする米当局の努力にもかかわらず、同根なのである。なぜか。

軍隊の存在理由が「征服」にあるからだ。性暴力/性搾取は最も下等な征服行為であるが、征服を存在理由とする軍隊にこうした秘められた征服行為が随伴しがちなのは自然なことである。性犯罪と慰安婦のような性奴隷制の違いは、制度化されたものかどうかの形態差にすぎない。

兵士を性暴力から遠ざけるために内部での教育・統制を徹底するというようなありふれた“対策”は効果がないし、橋下が推奨した―この点については発言を撤回した―“風俗”の利用という奇策によっても解決しない。他方、橋下が必要性を認識する―この点については発言を一部修正した―慰安婦制度も性暴力の亜類型としての性搾取の制度化であるから、真の解決策ではあり得ない。 

その点、現存自衛隊が性暴力/性搾取と比較的に無縁であり続けていられるのは、自衛隊が征服を目的とする軍隊ではないことによる。もし自衛隊が軍隊に「昇格」すれば、再び性暴力/性搾取が何らかの形で発現してくるだろう。その意味からしても、自衛隊の「国防軍」化は決して賢策ではない。

[追記]
それにしても、橋下発言は、その後の発言者自身による発言の撤回・修正にもかかわらず、彼の弁護士・政治家としての資質―わけても「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」(弁護士法第1条第1項)弁護士としてのそれ!―を疑わせるものと言わざるを得ないが、この国の司法試験及び公職選挙は彼を弁護士及び政治家として紛れもなく認証したのである。このことは、その恩恵に浴した橋下自身が当然にも強く信奉する試験や選挙のような「競争」的選抜法が、職業的資質の確かさを保証するものではないことを証明してくれている。


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