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持続可能的計画経済論(連載第12回)

2018-05-29 | 〆持続可能的計画経済論

第3章 持続可能的計画経済の概要

(4)持続可能的経済計画の実際〈2〉
 前回言及した持続可能的経済計画とは基幹産業分野を中心とした計画(生産計画A)であるが、これは見方を変えれば非食糧分野の計画である。これに対し、食糧生産の軸となる農漁業分野に関する計画(生産計画B)は別立てとなる。
 計画経済下の農(漁)業は、しばしば「集団化」というキーワードで表される。これもソ連の半強制的な協同組合化のイメージから誤解されがちであるが、本来、この語は伝統的な家族経営でも、資本による「集約化」でもなく、農漁業を公的な生産組織によって統一的に運営することを意味する。その意味では、「統合化」と言い換えた方が妥当であろう。
 その生産組織の具体的な概要については次章に回すとして、計画Bはとりわけ自然環境条件に強く規定される農漁業分野について、環境規準(及び安全規準)に基づき、持続可能な農漁業を追求するための全土共通計画と定義づけることができる。
 この点でも、ソ連式農(漁)業における「集団化」が―資本主義的な「集約化」と同様に―専ら生産効率の向上を志向していたのとは異なり、持続可能的計画経済下における「統合化」は、環境的持続可能性の保持を主目的としている点の相違は重要である。
 従って、ここでの計画は生産量の需給調節にとどまらず、農業分野では循環型農法の統一的採用、林業や漁業分野では乱伐・乱獲防止のための綿密な選別的数量規制にも及ぶことになる。 
 計画Bは一次産品に関わる計画であるが、現代生活では加工食品の生産も欠かせない。こうした加工食品を中心とする日用必需品消費に関わる分野にも、計画経済は及ぶ。この消費関連分野の計画(消費計画)は、食品を含めた日用品の公平な供給の調節を図る分配計画としての意義を持つ。
 こうした消費計画は、地産地消を徹底するためにも、全土共通計画である計画A及び計画Bとは異なり、地方的な単位で分権的に実施されるべきものである(詳細は次章で述べる)。
 その手法は基本的に一般計画と同様であるが、異なるのは大災害や疫病の大流行に備えた余剰生産が行われることである。こうした災害備蓄を計算に入れ、需要を超過する供給計画が立てられる。
 ところで、消費計画の中でも医薬品の生産については、その性質上通常の食品生産とは異なり、全く別立ての計画が必要である。この製薬計画は全土共通計画(生産計画C)として、中立的な治験・安全性検証機関とも連動しながら、実施される。


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