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共通世界語エスペランテート(連載第10回)

2019-06-28 | 〆共通世界語エスペランテート

第1部 エスペランテート総論

(9)エスペラント語の検証②

エスペラント語の習得容易度
 今回は世界語たりうる条件のうち、相対条件としての習得容易性の観点からエスペラント語を検証してみることにする。
 まず文字体系についてみると、エスペラント語はローマ式アルファベットで英語より二つおおい28文字だが、そのなかに英語のアルファベットにはみられない記号を付す特殊文字が6文字ふくまれることは、やや文字体系をいささか複雑にしているかもしれない。
 文法構造に関しては、基本的には屈折語系の構造をもつが、英語以上に簡易化されている。特に英語とことなり、動詞の活用変化が厳格に規則的で一切の例外をもたないことは学習上大きな利点である。
 また語順の自由度がたかいうえ、名詞・形容詞・副詞の主要品詞に固有の語尾がわりふられる品詞語尾という独特の規則があり、このことが文中の品詞把握を容易にするはたらきをする。これは未知の単語の品詞を推定して意味を把握することをたすけるであろう。
 一方で、形容詞にも複数形が存する点は、学習者があやまりやすく、英語にもみられない難点といえるかもしれない。また定冠詞が存在するが、これは省略も可能であり、事実上は日本語などと同様の無冠詞言語とみなすこともできる。
 さらに、語彙についてはマレー語やスワヒリ語と同様に接辞が発達しており、接辞を利用した造語や品詞変化も可能であるため、実質的な語彙数は限定されているとみることもできる。まえに語彙数のすくなさを習得容易性の要件とみるべきでないとのべたが、便利な接辞の存在によって語彙数を人為的に制限することなく語彙暗記の負担を軽減できる利点はある。
 発音体系については、まえにのべたとおり母音は簡単明瞭な五母音体系で、日本語のように母音のすくない言語の話者にも習得しやすい。また母音終止語がおおいことも発音とききとりを容易にする(ただし、子音終止語も相当数存在する)。
 他方、子音に関しては歯茎側面接近音l、fやvのような唇歯音が存在するほか、ドイツ語に影響されたかにみえるhとĥの区別など、それらの音韻をかく言語の話者にはやや習得に難があるといえるかもしれない。
 このようにみてくると、エスペラント語の習得容易度は総合評価でAランクと評しうるレベルにあるが、指摘したとおり、いくつか難点もあり、それらをよりきびしく査定するなら、Aマイナスという評価もありうるかもしれない。


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