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人類史概略(連載第16回)

2013-11-12 | 〆人類史之概略

第7章 機械革命と資本制(続き)

機械革命の18世紀
 18世紀は人類史にとって大きな画期であった。その大きさは紀元後最大規模と言ってよいかもしれない。すなわち18世紀、とりわけその後半期は機械革命―それは紀元前の金属器の発明に次ぐ用具史上の大革命であった―の時代であって、これ以降、現在に至るまで用具革命が連続的に継起し、技術革新の進歩自体が加速化していく契機ともなった。
 18世紀以前にも中東などでは中世から機織を効率化する糸車のような簡単な仕掛けの手動「器械」は発明されていたが、それらは生産様式自体を変革するほどに生産活動の効率化には寄与しない用具であった。生産様式をも一変させるほど効率化に寄与するより複雑な機械の発明は18世紀の西欧、それも特に英国に集中的に現れた。
 なぜ英国かと言えば、それはイタリアに発祥したルネサンスの集大成とも言うべき17世紀科学革命の中心地が英国であったことと関連があるだろう。すなわちフックやニュートンらを生んだ前世紀の科学革命が、18世紀機械革命の知的土台となったのである。中でも二大発明と言えるのは、蒸気機関と紡績機―両者が結びついて蒸気力績機となる―であった。
 蒸気機関はいち早く18世紀初頭にニューコメンが初めて本格的に開発したが、同世紀後半にはワットがより効率的かつ実用的な蒸気機関を開発した。蒸気機関はエネルギーを機械的な仕事に変換する本格的な原動機の嚆矢となり、大規模な生産活動に要するエネルギー供給に寄与した。
 蒸気機関はまた次の世紀に入ると、船舶や鉄道といった交通機関の動力源として応用化され、古代以来の商業活動にとってアキレス腱であった流通の速度を飛躍的に高め、商取引の敏速と貿易の拡大とに寄与した。
 一方、紡績機は古くからの糸車に代わり、18世紀後半にはより効率的な紡績機が次々と開発・改良され、最終的に蒸気機関を動力源とするカートライトの自動織機(力織機)につながり、いわゆる産業革命の主要舞台となる紡績業の進歩を促進した。 
 また鉄器に関しても、18世紀にはこれまた英国で石炭を使用するコークス製鉄法が開発され、鉄の大量生産に道が開かれるが、それは各種機械製品の登場ともマッチしていた。そのことは当然にもエネルギー源としての石炭の需要を高め、従来の木炭から石炭へのエネルギー革命を結果した。
 こうした18世紀の機械革命は、職人工房が担った伝統的な工業活動のあり方を変え、未熟練労働力を集約し、同一規格品の機械的量産を可能とする工場制度という全く新しい生産様式を生み出したのだった。 


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