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共産法の体系(連載第46回)

2020-06-11 | 〆共産法の体系[新訂版]

第8章 法曹法

(4)公的法務職域
 
共産主義的法曹制度の全体像をより明確にするため、本節及び次節では、法曹の具体的な職域について、その概要を述べる。本節で見るのは公務員としての公的法務職域である。
 この領域に属する法曹の代表例は、司法職である。司法職と言えば、裁判所制度下ではほぼ裁判官を指すが、原則的に裁判所制度を持たない共産主義的司法制度下では、下掲のような個別的な役割を担う司法職の総称である。
 これらの司法職はいずれも法曹共通資格であるところの法務士のうち、法務士職能団体の司法職候補者名簿に登載された者の中から、所定の手続きを経て、いずれかの圏域の民衆会議により任期を区切って任命され、個別の選抜試験等による官僚的な任用制にはよらない。

○衡平委員:市民法に関わる紛争の調停
○真実委員:犯則事件の真相解明

○護民監:基本的人権・市民的自由の擁護

○民衆会議法理委員会判事委員:有権的法令解釈
○民衆会議憲章委員会判事委員:有権的憲章解釈

○弾劾法廷検事及び判事:公職者・公務員等の弾劾裁判

 ところで、裁判所制度を持たない共産主義社会で比重を増す公証人も公務員であるが、司法機能そのものを担う司法職には含まれない。公証人は独立して事務所を構える公的法務職域の特例的な職能である。
 さらに、民衆会議法制局やその他の民衆会議所管機関の内部部局として設置される法務部署のスタッフも法務士または法務士補から任用される法務事務職として、公的法務職域に属する。
 これらの法務事務職も司法職には含まれないが、法曹の独立原則からその職務は部署外からの干渉に対して守られねばならない。


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