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共産法の体系(連載最終回)

2020-06-12 | 〆共産法の体系[新訂版]

第8章 法曹法

(5)私的法務職域
 
共産主義的法曹の在野における活動分野である私的法務職域には大別して、独立開業法務士と企業体等私的団体における法務部署の勤務法務士とがある。
 前者の独立開業法務士は私的法務職域の最も典型的な形態ではあるが、資本主義社会における独立開業法曹とは内実が相当に異なる。
 貨幣経済が存在しない共産主義社会においては、法律業務によって貨幣収入を得るという行為自体が成立しないため、法律業務も無償サービスとなる。従って、法律事務所は公益奉仕的な性格の強いものとなり、ビジネスとしてのロー・ファーム(法務企業)は存在しない。
 
 そのうえ、基本的に裁判所制度も存在しないから、弾劾司法の分野を除いては訴訟代理業務もほとんどないことになる。その代わり、いくつかの司法手続きにおいて、弁務人または補佐人としての法的地位を専業的に独占する。

○弁務人:各種の審問・弁論手続きにおいて、当事者を代理し、有益な弁明・弁論を行なう。
○付添人:犯則法関連の聴取・取調べや矯正保護委員会の審査等に同席助力し、当事者の権利を擁護する。

 なお、共産主義的法曹は、その独立性原則から、特定の個人や団体に対して専属的に常時有利な法的助言を行なうことで依頼者への従属関係を生む法律顧問業務も禁じられるため、法律顧問という地位は認められない。
 他方、勤務法務士は企業体等の私的団体の法務部署に所属して当該団体の法律事務を取り扱う専門職員であるが、同時に法曹としての独立性も保持する。従って、職員としての一般的な職務忠実義務は負うものの、法的判断に関しては外部はもちろん、団体の経営陣その他内部の他部署からも干渉されない。


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