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犯則と処遇(連載第48回)

2019-05-24 | 犯則と処遇

41 修復について

 捜査機関から人身保護監に送致された時点で、事案軽微にして、被疑者も真実委員会の招集を求めない場合であっても、被害者のある犯則事件では、被害者と加害者の間で司法を通じた関係性の修復が行なわれることが望ましい。これを司法的修復と呼ぶ。  
 司法的修復は民事紛争の和解と似ているが、和解のように具体的な項目について法的な合意を交わすのではなく、被害者と加害者の間での対話を通じて、加害者側の真摯な対面謝罪を促しつつ、被害感情の緩和・宥恕を導くプロセスである。

 従って、こうした司法的修復は専門的な訓練を受けた修復委員だけがこれを行なうことができる。修復委員は独立した司法職としての地位を持ち、外部からの指令や指示を受けることなく、独自に修復のプロセスを主導する。  
 修復を円滑に進めるためには、修復委員と被害者・加害者双方との個人的な信頼関係が重要であるから、修復委員は常に単独で任務に当たり、合議制は採らない。
 また、主張‐反論のような論争の場と化すことがないように、被害者・加害者側も原則として一対一で対面し、代理人や付添人は修復の場に同席することができない(同行し、別室待機することはできる)。

 修復は被害者及び加害者双方の個別的な同意に基づいて開始される。開始後も被害者または加害者はいつでも理由を述べることなく修復の中断を求めることができ、中断の要請があった場合、修復委員はこれを認め、中断を宣言しなければならない。
 修復のプロセスに期限はなく、複数回のセッションを通じて行なわれる。修復は必ず司法公署の所定の部屋で、両当事者の出席のもとに行なわなければならず、私宅や外部の施設で代用的に行なうことは許されない。
 また修復プロセスが進行中は被害者と加害者は個人的に連絡を取り合ってはならず、また修復委員も個人的に両者と連絡を取ったり、個別に接触を図ってもならない。  

 修復委員が被害者‐加害者間で十分に修復がなされたと判断したときは、終了を宣言する。修復の終了宣言は口頭で行なわれ、公的に記録される。ひとたび修復の終了が宣言されたときは確定力を持ち、再度の修復は行なわれない。

 以上の司法的修復とは別に、矯正処遇を受けた者に対して、処遇の一環として行なわれる修復も想定することができる。これを修復的処遇と呼ぶ。  
 このような修復的処遇を行なうかどうかは、矯正保護委員会の判断事項となるが、修復的処遇が適用されるのは、比較的重い犯則行為の場合であり、被害者側が加害者との対面に心理的抵抗や恐怖心を示すこともあり得るため、その適否は慎重に判断する必要がある。  

 修復的処遇は訓練を受けたスタッフが矯正センター内で行なうが、このスタッフは司法職としてではなく、あくまでも矯正員として任務に当たることになる。
 修復的処遇のプロセスは、上述のとおり、比較的重い犯則行為を犯した犯行者への処遇の一環であることを考慮し、そのプロセスは処遇対象者の改善と更生の到達度、さらには被害者側の感情的な機微をも勘案しながら、慎重かつ計画的に進められる必要がある。


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