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リベラリストとの対話―「自由な共産主義」をめぐって―(24)

2015-06-07 | 〆リベラリストとの対話

22:非暴力平和革命について⑤

リベラリスト:あなたがしばしば参照するマルクスは、「資本主義的生産が進むにつれて、教育や伝統、慣習によってこの生産様式の諸要求を自明の自然法則として認める労働者階級が発達してくる」と指摘していますね。私はある意味、名言だと思います。21世紀の労働者階級は、相当過酷な労働条件に置かれている人たちですら、今や資本主義を「自明の自然法則」として受容し、暴力・非暴力を問わず、もはや共産主義革命など想定外のことと考えているのでは?

コミュニスト:私も、マルクスのその予言は出色だと思っています。ですが、だからといってマルクスは資本主義が永遠不滅なりとは考えず、労働者階級の革命的覚醒を確信していました。私も、マルクスの革命論とは違いますが、労働者階級を含めた民衆の革命的覚醒を控えめに確信しています。

リベラリスト:私は、そこまで楽観的にはなれないですね。いったいどのようなきっかけで「民衆」―私も含まれるのでしょうか―が革命的に覚醒するというのか、ちょっと想像がつきません。

コミュニスト:それは『共産論』でも書いたことですが、資本主義がもたらす社会的苦痛が持続し、限界に達した時です。具体的には、「環境危機の深刻化による健康不安や食糧難、生活難に加え、雇用不安・年金不安に伴う生活不安の恒常化、人間の社会性喪失の進行による地域コミュニティーの解体や家庭崩壊、それらを背景とする犯罪の増加といった状況が慢性化すること」と指摘しました。

リベラリスト:あなたは「2008年からの世界大不況のゆくえが一つの鍵を握るであろう」とも指摘されていますが、そうすると、今のところ、世界大不況を経ても、あなたの言われる「社会的苦痛」はまだ限界には達していないとお考えですか。

コミュニスト:どこまで苦痛の限界に耐え抜けるかという苦痛耐性は、身体の痛みと同様、個人差及び国民差がありますので、一概には言えないのですが、アメリカや日本では表見上・統計上の「景気回復」にもかかわらず、相当深刻になってきていると見ています。

リベラリスト:つまり、格差社会の進行ということですか。

コミュニスト:単なる「格差」の問題ではなく、「豊かさの中の貧困」が深く進行しています。意外に見落とされがちな指標に、子供の貧困率があります。将来の社会を担う子供の多くが貧困状態にあることは、将来の社会崩壊を導きます。アメリカと日本という資本主義の象徴国で子供の貧困率が高いことは、まさに象徴的なのです。

リベラリスト:すると、貧困の中で育った子供たちが、将来米日で共産主義革命の担い手となると?

コミュニスト:それほど単線的ではありませんが、かれらが根源的に覚醒すれば、革命の主要な担い手となる潜在的可能性はあるでしょう。

リベラリスト:でも、マルクスが言うように、かれらもまた「教育や伝統、慣習によってこの生産様式の諸要求を自明の自然法則として認める」ようになるかもしれませんよ。私にはその可能性のほうが高いように思われます。

コミュニスト:かれらが資本主義的な「教育」を受けて、資本主義的な「伝統」や「慣習」を体得できれば、の話ですが、教育と貧困は反比例しますので、あなたが想定するほどうまくいくかどうかですね。

リベラリスト:なるほど、革命家にとっては、教育から脱落した青年たちは「オルグ」しやすいというわけですな。でも、マルクスをはじめ、歴史上の革命家たちは皆なぜか立派に高等教育を受けた知識人で、民衆からは遊離した存在ですよね。

コミュニスト:それはまさに共産党その他の政党組織を通じた従来型革命運動の限界性です。そもそも政党というブルジョワ・エリート政治の産物を再利用しても、別の形のエリート政治になってしまうのです。だからこそ、私は政党組織によらない民衆会議運動というものを提唱しています。

リベラリスト:なるほど、それなら教育のない青年たちを呼び込めると計算なさっているのですね。しかし、今日、学校教育の外にも、享楽という楽しいある種“教育”の場があり、革命よりそちらへ誘引されていく可能性もありますよね。

コミュニスト:たしかに、広い意味での娯楽産業資本は今日、資本主義の大きな産業部門を構成しており、大衆を革命より娯楽へ誘引していくある種の反革命機能を果たしていることはたしかです。これをどう乗り越えるかは、大きな課題ですが、一つの方法として革命運動自体に娯楽的要素を取り込むということが考えられます。

リベラリスト:「革命的テーマパーク」とか、「革命的アイドルグループ」の誕生ですか・・・。何だか、私も参加してみたくなってきました。

※本記事は、架空の対談によって構成されています。

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