ザ・コミュニスト

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アディオス、チャベス

2013-03-08 | 時評

「21世紀の社会主義」の旗手、ベネズエラのチャベス大統領が世を去った。「21世紀の社会主義」はチャベス個人と密接に結びついていたので、彼の死と共に事実上終わるだろう。

「21世紀の社会主義」を嫌悪してきたアメリカとその同調者であるベネズエラの資本家・富裕層は安堵しているだろうが、かれらも「21世紀の社会主義」の本質を正確に洞察しているとは言えない。

「21世紀の社会主義」は結局のところ、チャベス体制とその影響を受けた二、三のラテンアメリカ諸国にしか広がらなかったので、一般化はしにくいのだが、その中身を見る限り、ソ連型国家社会主義の中途半端な復刻版であった。経済的には旧来の産業「国有化」政策を軸とするが、旧ソ連ほど「国有化」は徹底されない。

それでも、こうした復刻政策は、中国や近隣の社会主義「大国」キューバでさえ市場主義へ傾斜していく中、チャベス個人のカリスマ的性格とも相まって、世界の注目を引いてきたことはたしかである。

また、「21世紀の社会主義」は武装革命でなく、選挙を通じた「投票箱による革命」として始まった点で新たな革命の方法としても注目されたが、革命後の展開は全く民主的とは言えないものであった。

政治的な観点から見れば、「21世紀の社会主義」はラテン的反米ポプリスモの流れを汲むもので、南米伝統の強力な大統領制を利用した独裁政治の一形態であった。とりわけ大統領に立法権まで付与する「授権法」はナチス的制度の復刻でさえあった。

簡単に言えば、チャベスとは、レーニンとヒトラーを半分ずつ掛け合わせたような、混沌とした21世紀のハイブリッド型革命家であり、彼の体制はソ連体制とナチス体制を半端に掛け合わせた「国家‐民族社会主義」とでも呼ぶべき混合体制であったと言えるだろう。

かくして、マルクスがヘーゲルの言葉として引用した「すべての世界史的事実と世界史的人物は言わば二度現れる」に付け加えた有名な言葉「一度目は偉大な悲劇として、二度目は惨めな笑劇として」が想起されるのである。


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