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世界共産党史(連載第1回)

2014-04-09 | 〆世界共産党史

序説

 共産党という政党組織は、ある意味では近代そのものである。それは政党というまさに近代的な政治制度の最も古い存在の一つであり、特に政党制度が発達した20世紀には世界中に拡散し、革命の主役となったり、あるいは議会政治に進出したりと、20世紀史の重要なプレーヤーとなった。21世紀に入っても、各国の共産党はそれぞれの国情に応じて、今も支配政党の座にあったり、議会で少数野党として定着していたり、あるいは公式政治の外部でゲリラ活動を組織したり、と様々な形で活動を続けている稀有な存在である。
 あらゆる政党組織の中で、共産党ほど世界に広く拡散した普遍的な政党はいまだかつてなく、またこれほど歴史の中で変幻自在に様々な役割を果たし、国家の抑圧・監視対象ともされ、党自体も内部抗争や粛清に揺れた激動的な政党もいまだかつてなかった。
 とはいえ、近代が終わろうとしている今、近代の象徴である共産党も次第に歴史の中の存在になろうとしている。現存共産党の多くはもはや党名に冠された共産主義を文字どおりに目指しておらず、党理念の脱共産主義化が進んでいる。さらに進んで党名も変更し、事実上消滅した共産党も少なくない。
 このあたりで、共産党を歴史的な存在としてとらえ直すことは、誤りではないだろう。もちろん、いまだ世界各国で共産党が活動している現状では、完全に歴史の中の存在となったわけではないが、各国現存共産党の歴史もすでに長いため、現在時点も含めて歴史的に眺めることは可能である。
 本連載では、世界各国の共産党の歴史を鳥瞰することを通じて、主に20世紀の世界歴史を俯瞰することを目的とする。その意味で、『世界共産党史』なのである。言わば共産党というプラズマを通して見た20世紀史である。
 その場合、共産党が各国で発揮した功罪をできる限り中立的に叙述してみたい。その意味で、本連載は各国共産党の悪事―人道犯罪的な事象も多い―だけを取り出して告発する「共産党黒書」でもなく、公式党史のように共産党の功績だけを数え上げる「共産党白書」でもない、言わば「共産党決算書」となるだろう。
 本連載は共産党の名において殺されたすべての人に捧げられる。なぜなら、共産党ほど死を大量生産した政党もないからである。世界中で無数の共産党員が殺され、また共産党によって無数の非共産党員及び共産党員が殺された。再び同じ過ちを繰り返さないためにも、このささやかな「共産党決算書」が少しでも役立つことを願う。


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