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続・持続可能的計画経済論(連載第1回)

2019-09-20 | 〆続・持続可能的計画経済論

序言

 筆者は地球環境の保全を主要な目的とする持続可能的計画経済という構想に関して、すでにその概要を論じた連載を公表しているが、そこでは実際に持続可能的経済計画をどのような原理に基づいて、どのように策定するかということについては、詳細に論及しなかった。  
 しかし、持続可能的計画経済を理念的な構想に終わらせないためには、実際の経済計画をどのように策定するかということに関する具体的な原理や技法を必要とする。そのため、改めて、如上の問題に特化した前連載の続編を展開する次第である。  
 持続可能的計画経済の原理とは、簡単に言えば、環境経済学と計画経済学とを組み合わせたものであるが、現時点での環境経済学はほぼ例外なく市場経済モデルを当然の前提としたものであって、計画経済モデルと結合させる試みはまともに行なわれていない。  
 しかし、地球環境の保全が喫緊のグローバルな課題となっており、とりわけ地球の平均気温を数値的にコントロールすべきことが科学者から提言されている時代には、生産活動の物量と方法の双方にわたってこれを計画的に管理することが不可欠であり、生産計画を個別企業の利潤計算に丸投げする市場経済モデルでは課題に解を与えることはできない。  
 一方、計画経済の原理を提供する計画経済学については、かつて計画経済のモデル国家とみなされていたソヴィエト連邦(ソ連)における70年近い経験と蓄積があったが、ソ連の解体後はその盟主ロシアを含めた旧ソ連構成共和国の大半が程度差やモデルの違いはあれ、資本主義市場経済へ転換したことにより、忘却されてしまった。  
 とはいえ、ソ連の計画経済モデルは遅れた農業経済国を短期間で工業国へ発展させるための開発計画の一種であり、そこでは環境保全の視点はほとんど無視されていた。しかも、それは国家に経済運営の権限を集中させるという国家全体主義的な政治理論と結びついてもいた。  
 そうした点で、ソ連の計画経済学はすでに時代遅れのものであり、これを単純に復活させることでは解決しない。とはいえ、計画経済の技法という点では、精緻な数理モデルの開発も進められていたソ連の計画経済学の遺産は改めて参照・再利用される価値を秘めている。  
 当連載では、現代の経済理論における最前線の花形でもある環境経済学と、すっかり忘却され、ほこりをかぶっているかに見える計画経済学という新旧の経済理論を結合して、持続可能的計画経済のより具体的なモデルを構築することを目指してみたい。


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