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持続可能的計画経済論(連載第22回)

2018-06-27 | 〆持続可能的計画経済論

第5章 計画経済と企業経営

(3)自治的労務管理
 前回も見たとおり、計画経済下における企業経営にあっては労働者の自主管理もしくは労使共同決定が基本となる。このことが意味するのは、労務管理が労働者自身によって自治的に行われるということである。
 この点、市場経済下の企業活動における労務管理は、経営と労働の分離に基づき、経営者が企業の収益獲得のための人的資源として労働者を使用するための管理政策であるから、それは本質上命令的かつ統制的なものとなる。
 これに対抗するべく、民主的な諸国では労働者に労働組合の結成を認めているが、労組はあくまでも社外の労働者組織に過ぎず、企業の内部的な意思決定に直接参加することはできないうえ、労組の活動には法律上も事実上も種々の制約があり、企業の労務管理への対抗力としては限界を抱えている。
 これに対し、計画経済下での自主管理や共同決定は、労働者が企業の内部的な労働者機関を通じて直接に企業経営に参加する制度であるから、そこにおける労務管理は本質上自治的なものとなる。
 反面、労働組合のような社外組織は必要性は減じるため、労働組合制度は廃止してさしつかえない。「労組廃止」という言い方が不穏であるならば、共産主義企業においては、資本主義的な労働組合の制度が企業の総監督機関たる内部機関としての従業員総会という形で発展的に解消される、と理解することもできよう。
 こうした自治的労務管理をもってしてもなお発生し得る個別的な労働紛争に関しては、社内に社外専門家から成る労務調停委員会を設けるなどの方法で個別に対処することが考えられる。
 ちなみに、広い意味での労務管理は準役員級の幹部労働者を含めた人事管理にも及ぶが、こうした幹部級人事管理の扱いについては別途考察を要する。基本的には、人事案件も自治的労務管理の範囲に含まれ、少なくとも幹部人事については自主管理ないし共同決定の対象となると考えられる。
 しかし、企業規模の大きな生産事業機構や生産企業法人の場合には人事の効率性を考慮して、一定以下の幹部人事については定款をもって経営責任機関の権限に委ねることも許されてよいかもしれない。


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