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続・持続可能的計画経済論(連載第38回)

2022-11-20 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(5)貨幣経済廃止準備 
 移行期にはまだ連鎖的な貨幣交換で成り立つ資本主義は完全には廃されず、その相当部分が残されたままである(残存資本主義)。しかし、この時期からほとんどの人にとって未知の新経済システムに適応するための試行を展開することは、円滑な移行を達成するうえで不可欠である。 
 こうした貨幣経済廃止準備は移行過程における最大の眼目であるとともに、最大の難関でもある。これに失敗した場合は、経済の混乱と物資不足、飢餓さえもあり得るので、最も慎重な熟慮のもとに遂行する必要がある。
 その点、貨幣経済廃止の到達点は通貨制度の全廃にほかならないが、これは経過期間を過ぎた初動期間の達成課題となる。その手前の経過期間では通貨制度は残存したまま、デノミネーションのようなショック措置も行うことなく、試行的な準備措置が採られる。
 経過期間における準備措置としては、以前見た経済計画会議準備組織も、経過期間を通じて貨幣交換によらない経済計画の策定について予行演習を行うが、これはもとより計画経済の対象範囲に含まれる基幹的生産活動における机上演習である。
 それに対して、市民の日々の暮らしに直結する消費財の貨幣交換によらない無償供給に関する予行演習は、先述した消費事業組合準備組織を通じて行われる。こちらは机上演習ではなく、主に食糧を中心とした日常必需品及び一部の雑貨的有益品の取得数量規制付きでの無償供給を実際に試行するものである。
 いかなる品目で試行するかは政策的な問題となる。こうした部分的な物資の無償供給は戦時/災害時の配給制に似ているが、配給制のような時限的な臨時措置ではなく、来る貨幣経済廃止に向けた準備措置であるから、経過期間の進行に合わせて、対象品目は次第に拡大していく。
 なお、電力やガスのような基本的光熱サービスの供給事業はエネルギー産業分野として経済計画会議準備組織の所掌事業に含まれるが、消費財の無償供給と合わせ、経過期間の段階から、こうした基本的光熱サービスの無償供給試行を開始することも想定される。

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