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続・持続可能的計画経済論(連載第25回)

2021-05-09 | 〆続・持続可能的計画経済論

第2部 持続可能的経済計画の過程

第5章 経済計画の細目

(2)産業分類と生産目標
 経済計画の策定に当たっては、産業分類とその項目ごとの計画期間における生産目標を数値的に明示することが求められることから、計画の細分化された枠組みとなる産業分類が重要である。
 産業分類と言えば、英国の経済学者コリン・クラークによる第一次から第三次までの産業分類が著名であるが、これは農林水産業を軸とする第一次産業から、工業を軸とする第二次産業を経て、無形的なサービスを軸とする第三次産業への経済発展を説明する道具概念として提唱された。
 クラーク産業分類自体はごく粗い分類であり、計画経済の枠組みとはならないが、持続可能的計画経済にあっては、第一次産業に係る経済計画(生産計画A)は、それ以外の経済計画とは区別されて策定されることになる。
 ちなみに、日本ではクラーク産業分類をベースに、より業種を細分類した標準産業分類が政府により公式に採用されている。これは三次の粗いクラーク分類を廃して、大分類・中分類・小分類・細分類の四段階で下位区分しており、生産活動に関わる全業種を総覧するには有効である。
 しかし、標準産業分類も経済統計上の分類であり、その中には文化関連事業や医療福祉関連事業その他持続可能的経済計画では計画外の自由生産となる業種も含んでいるため、計画経済における枠組みとして直接に使用することはできないが、自由生産領域を含めた経済統計分析においては有効性を持つ。
 これらの産業分類は、まさに分類することそれ自体を目的とした分類であるが、計画経済における産業分類は、より動的に計画生産の具体的目標を明示するうえでの基準となる分類枠組みである。
 その点、ワシリー・レオンチェフによる産業連関表は元来、マルクスが資本の再生産及び流通が円滑に進行していく過程を分析するために考案した再生産表式にヒントを得て新たに考案したものであるが、その使用目的は、現実の生産・流通活動におけるインプット/アウトプットの分析である。
 このようなインプット/アウトプットの予測計算は、各計画期間における生産目標を立てるうえで不可欠のプロセスであるから、産業連関表は持続可能的計画経済においても、大いに活用されることになる。
 もっとも、マルクス再生産表式に由来する生産財製造部門Ⅰと消費財製造部門Ⅱという大分類は、ソ連の経済計画において大きな二部門を分ける際に応用され、部門Ⅰを偏重する工業化が強力に推進されたのであった。
 しかし、われわれの持続可能的計画経済では、生産財部門Ⅰと消費財部門Ⅱのいずれに重点を置くかという発想ではなく、一般消費財に係る経済計画は全土的な一般経済計画からは区別され、地方ごとの消費計画として策定されるのであった。
 また、生産活動全般の動力源となるエネルギーに関しては、エネルギー計画として別途前提的な計画が策定されることになる。
 一般経済計画の策定に際しての細分枠組みとなる産業分類としては、特に環境的な持続可能性に最大の比重を置くことを反映して、大気・土壌・水資源・生物資源のいずれに主たる負荷を加える業種かという観点から分類することが考えられる。
 そうすると、単純に生産物の種類に応じた機械工業、金属工業、化学工業・・・といった分類ではなく、大気負荷産業、土壌負荷産業、水資源負荷産業、生物資源負荷産業といった大分類のもとに整理されることになるだろう。
 その点、目下最大の焦点となる温室効果ガスを生産過程で、またはその生産物が多く排出する業種は大気負荷産業に分類されることになり、これに分類される業種が最も多いであろう。*こうした環境負荷基準に基づく具体的な産業分類を的確に行うには、各業種の生産活動に対する環境科学的な詳細分析を必要とするが、ここではさしあたり立ち入らない。

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