第三章 協同的統治
本章から第13章までは、統治機構に関する規定の体系となるが、その筆頭たる本章では、統治における全体構造が示されている。表題の「協同的統治」がそのキーワードとなる。南アは連邦制に分類される統治構造を採るが、国‐州‐地方の三層は分別されつつも、協同的に機能するとされる点で、分権性より統一性に重心を置く統合的な連邦制を志向していると言える。
共和国の統治
【第40条】
1 この共和国において、政府は相互に分別され、相互に依存的かつ相互に連関的な国、州、地方の領域として構成される。
2 政府の全領域は、この章の諸原則を遵守し、かつ固守しなければならず、この章が定める範囲内でその活動を遂行しなければならない。
協同的統治及び相互統治関係の諸原則
【第41条】
1 政府の全領域及び各領域内の全機関は―
(a) 平和、国民統合及び共和国の統一を保持しなければならない。
(b) 共和国人民の福祉を保障しなければならない。
(c) 共和国全般のために、効率性、透明性、責任性及び一貫性のある統治を提供しなければならない。
(d) この憲法、共和国及びその人民に忠実でなければならない。
(e) 他の領域における統治の憲法的地位、組織、権力及び機能を尊重しなければならない。
(f) この憲法の規定により与えられた以外のいかなる権力または機能も行使してはならない。
(g) 他の領域における統治の地政学的、機能的または組織的な統合性を侵害しない方法で、自身の権力を行使し、その機能を果たさなければならない。
(h) 以下の要領で相互の信頼と誠実さをもって互いに協調しなければならない。
(ⅰ) 友好的な関係を醸成すること。
(ⅱ) 互いを援助し、支援すること。
(ⅲ) 共通の利益に関わる問題に関して互いに情報交換し、協議すること。
(ⅳ) 統治行為と立法行為を互いに調整すること。
(ⅴ) 合意された手続きを厳守すること。
(ⅵ) 互いに対する法的措置を回避すること。
2 国会の法律は―
(a) 相互統治関係を推進し、助長するための枠組み及び組織を樹立し、または規定しなければならない。
(b) 統治機関相互の紛争の解決を助長するための適切なメカニズム及び手続きを規定しなければならない。
3 統治機関相互の紛争の当事機関は、その目的で規定されたメカニズム及び手続きによってその紛争を解決するためにあらゆる努力をしなければならず、それを決着させるために裁判所に提訴する前に他のすべての解決策を尽くさなければならない。
4 裁判所は、第3項の要求が満たされていないと認めるときは、紛争を当事機関に差し戻すことができる。
第40条で規定された「協同的統治」の一般原則に基づき、第41条でその具体化がなされている。そこでは、国‐州‐地方の三層の相互尊重と協力が強く求められており、とりわけ第3項と第4項で法的紛争の防止に注意が向けられている。