生命
【第11条】
何人も、生命に対する権利を有する。
本条から先は個別の人権条項になるが、その筆頭にはすべての人権の生物学的な基礎となる生命に対する権利(生命権)が置かれている。国家権力との関係では、アパルトヘイト時代には政治的にも多用されていた死刑の廃止が念頭に置かれていると見られるが、南ア憲法は死刑廃止を明文で規定することは避けている。
人身の自由及び安全
【第12条】
1 何人も、身体の自由及び安全に対する権利を有する。それは次の権利を含む。
(a) 恣意的にまたは正当な理由なくして自由を奪われないこと。
(b) 裁判なしに拘禁されないこと。
(c) 公的であれ、私的であれ、あらゆる形態の暴力を受けないこと。
(d) いかなる方法による拷問もされないこと。
(e) 残酷、非人間的もしくは品位を欠く方法で処遇され、または処罰されないこと。
2 何人も、身心の完全性への権利を有する。それは次の権利を含む。
(a) 生殖に関する決定。
(b) 身体の内的安全及び外的コントロール。
(c) インフォームド・コンセントなくして医学的または科学的実験の客体とされないこと。
生命に対する権利を保障する前条に続き、本条は「人身の自由及び安全」という項目の下に、身体の自由や身心の完全性に対する様々な権利を個別的に保障している。特に第2項は、医療的な場面における自己決定の諸権利を憲法上の人権として保障するもので、南ア憲法の先進性を示している。
奴隷、隷属、強制労働
【第13条】
何人も、奴隷、隷属または強制労働に従属させられない。
近代的憲法に共通する奴隷制その他の制度的な隷従の禁止規定である。これも、広い意味では前条の身体の自由と安全に対する権利に含まれる。
プライバシー
【第14条】
何人も、プライバシーに対する権利を有する。それは次の権利を含む。
(a) 身体や自宅を捜索されないこと。
(b) 財産を探索されないこと。
(c) 所有物を押収されないこと。
(d) 通信の秘密を侵害されないこと。
本条は、人格権としてのプライバシーの権利を保障する。といっても、一般的な個人情報の保護ではなく、いずれも警察等の強制権力からの自由である。従って、正当な理由と手続きによる限り、制約が予定されている。