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犯則と処遇(連載第43回)

2019-04-16 | 犯則と処遇

37 真実委員会について(上)―招集

 「犯則→処遇」体系における捜査手続きでは、捜査機関が捜査を完了した後、全証拠がいったん人身保護監の元へ送致される。
 そのうえで、人身保護監は証拠を全体的に検討するが、その際、前回見た捜査時効についても判断する。捜査時効を決定しない場合でも、なお証拠不十分と判断する場合は、捜査機関に対し追加捜査を命じ、差し戻すこともできる。
 差し戻さない場合、人身保護監は真実委員会を招集するかどうかを判断する。真実委員会とは、事件のつど招集される非常置の司法機関であり、その役割は犯則事件の真相解明と事実認定に限局され、処遇を言い渡すことはない。言わば、純粋の真相解明機関である。  

 真実委員会を招集するかどうかの基準として、被疑者がこれを求めている場合は必ず招集するが、被疑者が求めていない場合でも、事案の重大性や社会的関心の程度によっては人身保護監の裁量で招集することができる。
 真実委員会は真実委員として名簿に予め登録された中から選任される委員長を含む二名の法律家とくじで抽選される二名の一般市民、さらに当該事案の真相解明に適した法律以外の専門家一名を加えた計五名で構成される。これら真実委員の選任手続きは人身保護監が主導する。  

 この選任手続きが完了した後、審議開始前に証拠調査手続きが行なわれる。予備調査は、真実委員会に提出される証拠の整理を目的とし、常勤専従の証拠調査員によって主導される。この時、共犯者を含む全被疑者及びその法的代理人に全証拠が開示される。

 被疑者側は、証拠の収集過程に違法性を認める証拠(違法な取調べによる自白を含む)については、排除の申立てをすることができる。申立てを受けた証拠調査員は調査のうえ、申立ての理由ありと認めるときは、証拠適格を欠く証拠として当該証拠を排除する。

 一方、証拠調査員は、証拠の信用性の度合いによって以下のような五段階のランク付けをし、信用度0の不適格証拠を排除したうえ、信用度別に整理された証拠一覧表を作成する。

○信用度4:S級証拠
ほぼ確実に個人を特定できる指紋やDNAなどの科学的証拠。

○信用度3:A級証拠
S級証拠以外の科学的証拠や精度の高い画像・映像証拠。

○信用度2:B級証拠
任意性が認められる被疑者の自白や信頼できる目撃証言、科学的証拠や画像・映像証拠以外の状況証拠で、事件との関連性が高度なもの。

○信用度1:C級証拠
B級証拠以外の状況証拠。

×信用度0:不適格証拠
伝聞証拠や被疑者の人格像に関する性格証拠、内容に整合性を欠く自白、不確実な目撃証言、プロトコルに従っていない科学的証拠。なお、違法に収集された証拠は、それ自体としては信用度が高くても、不適格証拠に準じて扱う。

 なお、証拠調査員は証拠の信用度の調査に必要な限りで、被疑者のほか、担当捜査員を含む証人を召喚し、聴取することができる。
 また、調査の結果、C級証拠しか見出せなかった場合は、真実委員会による審議不適事案として、人身保護監に報告しなければならない。報告を受けた人身保護監は、さらに検討のうえ、改めて捜査機関に捜査を継続するか、捜査を打ち切るかを勧告する。

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