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持続可能的計画経済論(連載第9回)

2018-05-21 | 〆持続可能的計画経済論

第3章 持続可能的計画経済の概要

(1)環境規準と計画経済
 前章で見たような数々の欠陥を抱えたソ連式計画経済に対し、ここで提唱する新たな計画経済はソ連式計画経済とは全く異なる観点と手法で行われるものである。
 まず観点という面から言えば、新しい計画経済は環境的持続可能性に視座を置く。つまり地球環境の可及的な持続性を目指す計画経済である。その意味で、「持続可能的計画経済」と命名される。
 持続可能的計画経済とは、計画的な環境政策にとどまらず、環境的持続可能性に関する指標を規範的な基準として計画される経済であって、それは計画経済の一つの類型である。簡略に言えば、環境規準に基づく計画経済―環境計画経済―である。
 このような環境指標に規律される計画経済は経済開発に圧倒的な重心を置いていたソ連式計画経済―言わば開発計画経済―では論外のことであり、結果として、ソ連式計画経済は開発優先政策による資源の浪費・消耗による環境破壊を引き起こしたのであった。
 その意味では、持続可能的計画経済はソ連式計画経済を反面教師としつつ、ソ連邦解体後、高まってきた地球環境保護の潮流に合致した新しい計画経済のあり方として浮上してくるべきものである。
 現時点ではこうした持続可能的計画経済を現実の政策として採用している国は(筆者の知る限り)存在せず、最も先進的な環境政策を提起する緑の党やその周辺の環境保護運動にあっても、計画経済の提唱には踏み込まず、市場経済を受容したうえでの環境政策の推進を主張するにとどまっていることがほとんどである。
 これはちょうど市場経済を維持したまま福祉政策でこれを補充する修正資本主義としての社会民主主義とパラレルな関係にもあり―しばしば重なり合う―、修正資本主義としての環境主義理念の表れでもあるが、その限界性はすでに人為的気候変動のような国際的課題への取り組みが顕著に前進しないことにはっきりと現れているのである。
 地球環境上の諸問題を根本的に解決するためには、環境規準によって生産活動を量と質の両面から体系的に規律する必要があり、それを可能とするための計画経済こそが、ここでの持続可能的計画経済にほかならない。

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