ザ・コミュニスト

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愛国小学生

2014-04-06 | 時評

来春から使われる検定済み小学校社会科教科書すべてで、竹島、尖閣諸島が日本固有領土と明記されるという。いよいよ小学校からの領土教育である。

しかも、今回の検定では、「日本の領土である尖閣諸島に対して、中国が領有を主張しており、政府は、その解決にむけて努力を続けています」との原案記述が、「日本の領土である尖閣諸島に対して、中国が領有を主張しています」と修正された例もあるというほどの統制ぶりである。

「政府の解決努力」という文言すら削除させるということには重大な意味がある。ここで言う「努力」とは非軍事的な外交努力を指すと見られるが、それを削除するということは、この問題に関しては外交交渉を飛び越えた軍事的な解決手段が選択されるべきだということを暗黙のうちに示唆しているからである。

これは、問答無用で政府の領土見解を小学生段階から注入しようという一種の洗脳教育である。近い将来、政府の領土見解を機械のように暗誦する「愛国小学生」が大量に誕生するのだろう。小学校から領土主義を仕込まれた人間は戦争に対する忌避感も薄く、領土問題の軍事的解決についても肯定的となる。

こうまでして政府が領土に固執するのは、戦前のような外へ向けての侵略策動からではもはやなく、敗戦後のサンフランシスコ講和条約で切り縮められた狭い領土+アルファを守り抜こうという内向きのいささかせせこましい衝動に由来しているものだろう。

そうした点で、近年の領土教育は戦前の軍国教育とは一線を画するものであることは意識しておきたいが、軍事的なものへの生徒の抵抗感を薄れさせるという共通効果面も強く認識される必要がある。

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