ザ・コミュニスト

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通貨破壊戦争

2013-05-31 | 時評

2年前の最初の時評は「ドル安」を扱うものであった。そこでは基軸通貨ドルの価値下落を資本主義の終わりの始まりの予兆として扱ったのだった。しかし、今や「ドル高」について書かねばならなくなった。コミュニストは当てにならないと思われるかもしれない。

だが、長期的に見れば、1ドル=360円時代に比べ、1ドル=100円はなお「ドル安」の流れの中にある。それは1970年代の「ニクソン・ショック」以降、米国自身が望んできたことでもある。自国通貨の価値をあえて低めるのは、労働力の価値を下落させ、輸出を伸ばすという最も安易な景気浮揚策だからである。

日本は1980年代以降、長らくこうした米国のドル安戦略のせいで、円高に苦しめられてきたが、ここへ来て円安誘導で巻き返しを図り、一定の成功を収めているように見えるわけだ。

このように主要通貨を持つ諸国が自国通貨の価値を低め合う「通貨戦争」の実態は通貨破壊戦争である。それは近隣窮乏化政策として非難されることもあるが、むしろ国内窮乏化政策の面が強い。輸出で景気回復に成功しても、反面で輸入は不調となり、現今の燃油高騰のような事態も招く。実質賃金は下落する一方、物価は上昇する。

これは資源を輸出できる資源国にとっては有利な策だが―しかし生活者にとっては不利―、日本のように資源を輸入に頼る無資源国にとっては総決算すれば不利な策ではないか。

いずれにせよ、通貨破壊戦争即貨幣廃止への道ではないとはいえ、キャッシュレス化の進展と併せ、人類は無意識のうちに既存の貨幣システムから離脱しつつあるとも言える。それはやはりそうとは意識されない終わりの始まりの徴候である。

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