MOVIE KINGDOM Ⅱ

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ポイントは★~★★★★★★

No.020 「ミュンヘン」 (2005年 米 164分 シネスコ)

2006-03-02 14:46:44 | 2006年劇場鑑賞
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 エリック・バナ
    ダニエル・グレイグ
    ジェフリー・ラッシュ



相変わらず上映時間が長い作品は後回しにしてしまうのですが、この作品も話題作の割りにはだいぶん後回しになってしまいました。
早く見たかったんですがね~
この作品を見る前にビデオで「黒い九月 テロリスト」と言う1976年に製作された作品を見ておったんですが、この映画はミュンヘン五輪の人質事件をドキュメンタリータッチで描いた作品でテロのリーダーにフランク・ネロ、ミュンヘン警察のウィリアム・ホールデンという2大スターを起用していた。
テログループが選手村を襲撃する場面は「ミュンヘン」でも描かれてるが共通する描写があったりして細かいトコなどの発見があったりするので、「ミュンヘン」見る前に御覧になるのをオススメします。

「黒い九月 テロリスト」は11人の人質が殺害されミュンヘン警察の奪回作戦が失敗するところで映画が終わりますが、この「ミュンヘン」はまさにそこから始まります。
報復を決意したイスラエル政府が秘密情報機関モザトの一員であるアヴナーに11人のテロの首謀者の暗殺を命ずる。
普通に生活をし身重の妻と慎ましく暮らしていたこの男が4人の仲間たちと共に暗躍しテロの首謀者たちを一人、また一人片付けて行くのをサスペンスフルに冷たい色調でスピルバーグは描いていく。
電話に爆弾を仕掛け標的が電話を取り今まさに爆破スイッチを押そうとする瞬間に標的の娘が居て・・・とか、標的に近づき暗殺しょうとする瞬間酔っ払いに絡まれてしまったりとハラハラさせる演出はスピルバーグらしい手法で見るものを引きつけます。
サスペンス映画としても充分面白いと思いましたね。
ただ単にエンターティメントとして見れるのでなく重いテーマがこの作品には感じ取れますね。

ミュンヘンの人質事件をTVで見ていたアヴナーは胸の痛む事件だとは思いつつも他人事だったはずなのに、まさかその報復グループのリーダーになろうとは・・・
「何故、私なのか?」劇中ジェフリー・ラッシュ扮する事件担当官のエイブラハムに聞く場面があるが、彼の素朴な戸惑いが感じられます。
4人のメンバーと共にテロの首謀者を順番に暗殺していくアヴナーは最初こそピストルを抜くのも覚束なかったが暗殺を重ねる事に沈着冷静に淡々と任務遂行していく・・・やがて行き着く疑問「私たちは正しいのか?」

標的であるテロの首謀者たちも普段は良きパパであったり、明るく優しい普通の男だったりする。
そんな彼らに報復の名の下に暗殺していく彼らそれぞれの気持ちが揺らいでくる。
標的を殺したところでまた違う人間がその後釜で現れてくる現実に終わりのない堂々巡りのような任務の空しいこと・・・
アヴナーが途中電話で子供の声を聞いて涙する場面の痛ましいこと!
やがていつしか自分たちも追われるていく立場に追い込まれていき逆に恐怖に怯えはじめる。

[報復]と言う行為では結局なんら解決にはならず悲劇が繰り返されるにしかすぎない。
現在も続いてるテロやそれに対する報復・・・イラクでの戦争もまさにこの「ミュンヘン」の物語同様に始まってしまえば終わりのない戦争になってしまった。
誰を殺して誰を裁けば終わるのか?そんな単純に物事が解決すれば戦争も起こらないであろう。
しかしそれでも世界のどこかで誰かが誰かを殺し、それを持って「正義」と呼ぶものたちも居るこの現実は多数の民族が存在する限りは永遠に避けて通れない事なのかも知れない

正義と愛国心を胸に秘めて任務についた5人の男たちがやがて罪悪感と恐怖に苛まれていく姿はまさに選ばれてしまった者のたちの悲運なドラマと感じた



★★★★ 2006.2.28(火) アポロシネマ8プラス1 18:25 F-2