黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『必然という名の偶然』西澤保彦(実業之日本社)

2011-07-26 | 読了本(小説、エッセイ等)
櫃洗市中心街にある、シティホテル<シンヒツ・ロット>で、“ケーカク”こと恵本角樹は、“オヤカタ”こと岡館真人と再会。私立囲櫃学園出身で同級生である二人は、このホテルで催される同級生・倉橋譲の結婚式に呼ばれているのだが、倉橋には<逃げられ癖>があり、それをネタに掛けをする。
倉橋は、大学在学中に交際していた女性と結婚するつもりだったが、直前で逃げられ、帰郷し和菓子屋を営む彼の実家で手伝いをしていた岩佐恭子は結納を済ませた後に、不倫相手と逃亡。同じ商店街で呉服屋を営む家の娘で、小学校時代の同級生・山中初美と結婚式までこぎつけたものの、式の最中に元の恋人であった若いDV男に彼女を連れ去られてしまう。おまけに今度こそはと男の影のない女性・仁科純代を見つけたものの、披露宴直前に彼女は失踪、一週間後に鎮西耕平という男とともに遺体となって発見された…という遍歴の持ち主だった。
そんな彼の今回の結婚相手は、若く美しい鍵谷由衣。
さらに、二人の同級生……テレビ局で編成部部長をしている“ケージ”こと刑事唯徳と、アラブかどこかの大富豪夫人となった“ヒロっち”こと月夜見ひろゑも式に呼ばれており、ドラマよろしく探偵を気取るひろゑは、由衣が鎮西と関係のあった人物であったことを告げるが……『エスケープ・ブライダル』、
女子アナウンサー・榎本裕子の夫で、売れないフォトグラファーの榎本忠純が、自宅によく似た住所の櫃洗市桝丘町のハイツ三○五号室で遺体となって発見された。
“■■娘とまちがいを犯しました 智恵美といっしょに逝きます ■■■■■もうしわけない”と書かれた、遺書めいた手紙が残されていた。
裕子には前夫との間に高校生の娘がおり、その娘が智恵美。前夫の名は同じ忠純だった。
智恵美から裕子に“お父さん 飲んじゃダメ”というおかしなメールが来ていて……『偸盗の家』、
現在無職で、実家にやっかいになっている江原広和は、高校時代の同級生、“ケンノ”こと研野太加嗣から久しぶりに電話をもらい、近所の店<つや>に呼び出された。
研野は現在彼らが通っていた、県立櫃洗東高校の英語教師をしており、同窓会の世話係のようなこともしているというのだが、あることに気づいたのだという。
岡田幸輝、佐々木節子、角田清子……東高校普通科で、同窓会名簿の七番目に記されている人物が二週間おきに次々と亡くなっているというのだ。その法則からすると今度狙われるのは、広和で、今晩あたりが危険らしい。
家に帰ってから思い悩んでいた彼に、姪の嘉穂は……『必然という名の偶然』、
私立囲櫃学園で、中等部三年の担任を務める教師・和田宏が受け持つ生徒・鳥谷二三枝が、学園の高等部に進学するのではなく、公立高校を受験したいと言い出した。
彼女の母から説得するために家に来て欲しいと呼び出された和田は、石間木市にある彼女の家に向かうことになったのだが、ちょうど帰宅するところであった彼女も車に乗せてゆくことに。
ところが、折からのゲリラ豪雨により国道が冠水、通行止めされてしまった為に、たまたま出かけてしまった母は櫃洗から家に帰れなくなってしまったという。
同じ石間木に住んでいる彼は、そのまま帰宅することにするが、直前にかかってきた妻・美香からの電話には、自分は学園のある櫃洗にいると嘘をつき、驚かそうと考えた。
ところが帰宅するといるはずの美香はおらず、さらに警察から連絡があり、彼女が櫃洗で事故に遭い亡くなったという……『突然、嵐の如く』、
アビル商事の営業マン・萩本昌司は、妻・里恵から誘われ、大学時代、彼が住んでいたマンション<メゾン・ド・ナカマ>の近くにあるというビストロ<点き味>という店で食事をすることに。
待ち合わせの時間までの時間を持て余した萩本は、たまたま持っていた以前の部屋・四○五号室の合鍵を使い、出来心からその部屋に入り込む。
現在ではアーティストが作品を置いているという部屋で、住人である女性は最前にタクシーに乗って出かけたはずだったが、何者かが侵入。慌てた萩本は、顔を隠していたその人物の首を絞め、殺害してしまう。
里恵との約束を破り、会社に戻った萩本だったが、そこに警察から電話が……『鍵』、
東京で俳優をやっている同級生・長渕圭祐が出演する映画の上映に伴い、舞台挨拶をする為に櫃洗に帰って来るという。
それに合わせて飲み会をしたいという彼から、人を集めるようにと頼まれた倉橋。
そんな倉橋から頼まれた刑事は、<シンヒツ・ロット>のロイヤル・スイートにセッティング。ひろゑ、刑事、岡館、倉橋が集まった。
かつての同級生の話が弾む中、突然長渕は席を立ち……『エスケープ・リユニオン』の6編収録。

櫃洗周辺で起こる事件を描いたミステリ(でも腕貫さんは出ない…;)。
それぞれに、いろんなところで“偶然”が作用している感じのお話。
実に西澤さんらしいオチ、というか何というか…(笑)。

<11/7/26>