黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『はなとゆめ』冲方丁(KADOKAWA)

2014-02-15 | 読了本(小説、エッセイ等)
紆余曲折の末、28歳にして後宮へと出仕することとなった清少納言。華やかな世界で気後れする彼女を、引き立ててくれたのは17歳の中宮定子…自分の中に眠る才能を引き出してくれた定子に心酔してゆく。定子の一族の凋落、道長の謀略などによる複雑な状況が絡み合う中でもお互いに信頼を持ち続ける。
やがて定子から貰った大切な紙に何を綴るべきかを考えるようになった清少納言は……

清少納言が中宮定子の元に出仕し、後に『枕草子』を書くまでのお話。
先に新聞連載で読んでいましたが、ようやく単行本で読みました(笑)。
なんかこう、女子高的な雰囲気で、うつくしくもせつない感じがとてもよいです。
学校で古典を学ぶ前に読むと、すごく興味を持って勉強できるんじゃないかな~。
個人的には連載時のイラストがすごく素敵だったので、まったく使われていない(というか表紙の方は違うひと)のが残念…;;

<14/2/14,15>

『風の吹く日にベランダにいる』早坂類(河出書房新社)

2014-02-09 | 読了本(小説、エッセイ等)
街角でまちぶせている耳鳴りに橋本が今日もさらわれている
川沿いの帰化植物にうずもれて触れ合っていることのせつなさ
ほんとうはありおあらゆるひとたちが僕はしんじつ好きでした
人前でものを食べないひとになる 数かぎりない夕ぐれの街
それだけのことに僕らは生きていてたかが日記に百冊の生
目の中にふる雪を見ている僕の中にふる雪をみていろよ猫
さんざんに美しい幻の家であるような紺のコートを羽織る
清彦のおばあさまのため僕たちは真冬の墓地でてづまをします
あなたへの供物のように住んでいるくつぬぎ石は五月の庭に
どうなってゆくんだろうね、でペンを置く わからないから外で見ている

早坂類さんの第一歌集。随分前に出版されたもの。
今は小説の方に転向されたのか、な?
『短歌という爆弾』で引用されていて気になったので読んでみました(というか奇跡的に図書館で発見)。

<14/2/9>

『ちょうちんそで』江國香織(新潮社)

2014-02-08 | 読了本(小説、エッセイ等)
高齢者向けマンションで一人暮らしをする54歳の雛子は、目の前にはいない架空の4つ下の妹・飴子と空想の会話でむかしを懐かしみながら暮らしている。
そんな彼女の様子を気にしては、たびたび様子を見にくる隣人の丹野氏。その妻である丹野夫人は、同じマンションの住人である岸田夫人と親しい。
次第に明らかになってゆく雛子の謎……

ちょっと謎めいた女性・雛子の周辺を描いたお話。
特にこれといった大きな事件や進展がある訳ではないけれど、そんな淡々とした世界。その中で時折描かれる細部がとても効果的に響いてました。
ミルク紅茶にチョイスを浸すのはちょっとやってみたい…(笑)。

<14/2/7,8>

『湯島ノ罠 居眠り磐音江戸双紙』佐伯泰英(双葉社)

2014-02-05 | 読了本(小説、エッセイ等)
小梅村では尚武館道場の改築中。普請場に槌音がひびく春、陸奥白河藩主松平定信が坂崎磐音を訪ねて突然やって来た。
先の江戸起倒流鈴木清兵衛との戦いの折、面識があった定信に自ら稽古をつけ、師弟の関係となる。
一方、傷も癒え徐々に回復していた霧子が、弥助と二人揃って小梅村から姿を消してしまい、心配する周囲の人々。実はひそかに諜報活動を再開していた霧子は、新番士の佐野善左衛門政言を消そうとする動きを察知、田沼意次の愛妾おすなの弟・五十次とほか三人の動きを知り、あれこれ暗躍していたのだ。
そんな中、道場のこけら落としに大名諸家家臣若手を剣術試合を行うことになり、皆で稽古に励むが……

シリーズ第四十四弾。あまり大きな動きはなく、終わりに向けて徐々に収束中、というところ。あとは山形の奈緒さんのこともちらりと出てきます。

<14/2/4,5>

『迷子のカピバラ』秋月祐一(風媒社)

2014-02-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
地下街で迷子になつたカピバラにフルーツ牛乳おごつてやらう
きみどりの目をしたうさぎに一晩中「くぶくりん」つて囁かれてる
千年はうたた寝のうち桐の花の舞ひ散るころにお会いしませう
開けてごらん影絵のやうな家々のどれかひとつはオルゴールだよ
「生涯にいちどだけ全速力でまはる日がある」観覧車(談)
祭つづき浮かれた街に三日ゐてまたゐなくなる薄荷商人
あられもない寝相で夢をみるきみはまだタイトルの付いてない曲
ふむぐうと抱きついてくる無表情 これは淋しいときの「ふむぐう」
「まつしろなパンダに生まれ変はる夢、これつて何かの罰だとおもふ」
海までのゆるい坂道おりてゆく銘菓ひよこの顔つきをして

秋月祐一さんの第一歌集。
写真もたくさん入っていて、とても素敵な造本♪
ちょっとファンタジックでキュートな世界観が、かなり好みです(*´∀`*)

<14/2/2>

『ボリバル侯爵』レオ・ペルッツ(国書刊行会)

2014-01-24 | 読了本(小説、エッセイ等)
1812年冬。スペインに侵攻したナポレオン軍に対し、占領下のラ・ビスバル市ではゲリラ軍による反攻計画の噂が囁かれていた。
ナポレオン軍のフォン・ローン少尉は伝令任務中に負傷し、礼拝堂の屋根裏に身を潜めている間に、偶然、ゲリラの首領<皮屋の桶>と、当地の民衆から偶像的崇拝を受ける謎の人物、ボリバル侯爵との密談を聞いてしまう。
ボリバル侯爵は、ラ・ビスバル市攻略作戦を開始するにあたり三つの合図を授けた。
第一の合図は、館の屋根から上る黒い煙。第二の合図は、聖ダニエル修道院のオルガンの音。そして第三の合図は、使いの者が持っているという短刀だという、
少尉の報告を受けた占領軍ナッサウ連隊の将校たちは、市内に潜伏するボリバル侯爵を捕えて三つの合図が発せられるのを阻止しようとするが、動き始めた運命の歯車は彼らを逃れ難き破滅へと導いていく……。

ドイツの無口な領主として亡くなったヨッホベルクの遺品の中から見つかった、彼がナッサウ連隊の少尉としてスペイン出征した折の回顧録として描かれたお話。一応幻想小説、かな。
何とか侯爵の計画を阻止しようとするけれど、思わぬかたちでそれが実行されてゆく様と、なんといっても最後のどんでん返しがちょっとミステリっぽい感じかも。

<14/1/22~24>

『いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記』西條奈加(東京創元社)

2014-01-21 | 読了本(小説、エッセイ等)
父の転勤について行かず、神楽坂に住む祖母の“お蔦さん”こと津多代と昨年から一緒に暮らしている中学三年生の少年・滝本望。
お蔦さんは元芸者で、女優だった経験もあり、近所の皆の人気者だが、料理はまったくできず、料理上手な望が請け負っている。
三学期に入ったある日。望の友人であるサッカー部の元キャプテン・森彰彦と、彰彦の後輩で一年生の金森有斗、幼馴染の木下洋平を滝本家に招き、夕食をご馳走し、有斗を家に送り届けた。だがその直後、飛び出して来た彼曰く、家が血だらけでだれもいないという。
その日を境に、行方不明となった有斗の両親と姉は何らかの事件に巻き込まれたのか?
マスコミたちに追われる有斗を滝本家で匿うが、次第に有斗にも隠されていた金森家の秘密が明らかになり……

『無花果の実のなるころに』の続編。今回は長編でした。
お蔦さんたちは相変わらずで、楽しく読めますが、題材的にはちょっと重めかな。

<14/1/21>

『沈むフランシス』松家仁之(新潮社)

2014-01-20 | 読了本(小説、エッセイ等)
東京での仕事を辞め、北海道北部・湧別川沿いの村に、ひとり引っ越してきた撫養桂子。
郵便配達の非常勤職員として細々と生活しながら暮らしはじめた彼女は、ある日、管轄内に暮らすオーディオマニアの和彦に招かれた。「フランシス」を管理する仕事をしている彼と関係を持つようになった桂子だったが……

北海道を舞台にした恋愛小説。どこか謎めいた雰囲気は漂いつつも、淡々とした語り口で、あまり起伏のないお話。ですが、北海道という舞台にとても似合っていますね。
タイトルとシンプルな装丁に惹かれて手に取りました。ちなみに「フランシス」は発電装置です。

<14/1/19,20>

『GOSICK RED』桜庭一樹(KADOKAWA)

2014-01-18 | 読了本(小説、エッセイ等)
1931年。旧大陸をの逃れ、アメリカ・ニューヨークで暮らし始めた久城一弥とヴィクトリカ。一弥は見習い新聞記者として新聞社<デイリーロード>紙で働き、ヴィクトリカは探偵事務所<グレイウルフ探偵社>を構え、事件を解決している。
そんなある日、ヴィクトリカの元にひとつの依頼が舞い込んだ。
イタリアンマフィアたちが被害者となっているという連続殺人事件の真相を突き止めろという闇社会の黒幕ガルボ・ボスからの依頼だった。一度は断ったのだが、一弥の甥である緑青を人質に取られ、その話を引き受けることになってしまう。
やがて被害者であるギャングの共通点は、一弥の勤める新聞社が発行している新聞に取り上げられたギャングたちであることが判明、どうやら一弥が取材した精神分析医GIボレイド博士が関わっているらしいのだが……

久々のGOSICK。アメリカに渡ったふたりのお話。
今回一冊で終わるのかと思いきやどうやらまだ続く模様…。
この先のことはちょっと判明してるので、どう繋がるのかが気になりますね。

<14/1/17,18>

『鈴を産むひばり』光森裕樹(港の人)

2014-01-12 | 読了本(小説、エッセイ等)
鈴を産むひばりが逃げたとねえさんが云ふこれでいいよねと云ふ
内側よりとびらをたたく音のして百葉箱をながく怖れき
まして死を拒む理由をもたざれば夏の廊下をわれは好みき
声のする方へといふ声ばかりしてどの声なのかわからずにゐた
シュレディンガーの雲がなにいろだらうともまがふことなきあかね雲なり
もうゐないひとであるゆゑ此処にゐて此処にゐるゆゑもうゐないひと
たましひがりつとも売れやしない日にあなたがくれたお金を遣ふ
美しきもの告げるにはやき仲なれば沈む夕陽は沈ませておく
わらふからそんなに君がわらふからためいきがまた飴玉になる
擦れ違ふすべての靴の裏側がやさしく濡れてゐるといふこと

光森さんの第一歌集。どんな歌を詠まれるのかとても気になっていたのですがようやく入手できました♪
かなり好み、というかわたしの中で思い描く怪談短歌の理想形かも…(*゜▽゜*)

<14/1/12>