Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

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「板ばね」でコンピュータ?

2011-02-23 23:59:59 | Technology

今目の前にあるPC・・・だけではなく、携帯電話にテレビ、レコーダー、果ては掃除機や炊飯器まで、最近の家電にはほぼ集積回路が搭載されています。

これらは、半導体で作られた微細なトランジスタ等の電子素子を組み合わせて、様々な機能を実現しています。具体的にはAND、OR、NOT等の論理ゲートを組み合わせ、複雑な計算処理を行っているのですが、極論すれば、別に半導体を使ったトランジスタを使わなくても、論理ゲートさえ作ることが出来れば変わりに使うことが出来るのです。珍しい例としては、水を使った回路なんてのも存在しますし、電気の代わりに光を使った回路が将来的に有望だと言われているようですね。

さて、今回紹介するのは、半導体の代わりに「板ばね」を使うという、何とも荒唐無稽に聞こえてしまう画期的な新技術です。

マイクロマシン技術を用いたデジタル演算の新しい手法を開発 NTTニュースリリース

通常のコンピュータでは、最も基本的な論理演算であっても複数のトランジスタが必要ですが、今回NTTの物性科学基礎研究所が開発した手法では、マイクロマシン技術を用いて作製した厚さ1.4µm(ミクロン:1ミクロンは100万分の1メートル)という微細な板バネ素子をたった 1個だけ使い、周期的な電圧を加えて発生させた約10 nm(ナノメートル:ナノは10億分の1)の微細な板バネの振動に複数のデジタル情報を異なる周波数を用いて入力する事で、複数の論理演算を同時に実行することに成功しました。

技術の内容を見ると、正直「!」な内容が多いですが・・・いや、本当に画期的なんですよ。

要するに、半導体の論理ゲートの場合は「電圧」、電気が来ているか来ていないかで入力を制御していましたが、この板ばねの論理ゲートの場合は信号の入力を周波数で行っています。例に出されている、AND、ORゲートの動作例についてを確認すると、入力された二つの周波数について、両方とも入力されたANDの時、片方だけでも入力されたORの時に特有の周波数が出力されています。・・・これだけでもANDとORの二つの論理ゲートを一つの素子、しかも板ばねで実現しているという結果なんですけれど、恐ろしいことに、

今回開発した手法では、新たな周波数振動を次々と作り出すことで、20個以上のトランジスタを複数連結した複合論理回路と同等の演算機能を、たった1個の板バネ素子で実現しました。

なんてことも出来るそうです。むしろ周波数制御に大きなリソースが食われそうな気もしないでもないですが、将来に期待が持てそうな技術ですよね。

まだ基礎研究の状態ですので、製品化までには時間がかかるでしょうが、こういうニュースは、まだまだデジタル分野には伸びしろがある事を示しているようで、なんというかうれしいですね。



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