Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

携帯業界のキーパーソン、語る

2005-10-07 20:38:45 | Weblog
 今回紹介する記事は、携帯電話の話・・・何ですけど、なんだか素直に納得できる話でした。私はふつうのビジネスの世界では生きていませんが、このような話は大変興味がありますので、実におもしろかったです。

「新規参入が値下げ競争にくるかぎりは、脅威じゃない」

10月4日、都内で開催された「NICT情報通信ビジネスセミナー2005」にNTTドコモ プロダクト&サービス本部のマルチメディアサービス部長、夏野剛氏が登場。ドコモの戦略や、将来展望などを話した。

 内容を要約すると、「最近ドコモがシェアを落としたと言われているし、新規参入業者も取りだたされているが、私たちの戦略は揺るがない」という事でしょうか。

 シェアが落ちているのにもかかわらずの強気発言には、インセンティブモデルとそれに関わる利益についてのからくりがあるようです。

夏野氏はまず、携帯業界に詳しくない人間もいるだろうとして“携帯業界の常識”を紹介。「携帯端末は売るほど損」――というのがそれだ。

 この論理は簡単だ。国内ではキャリアが、携帯端末をメーカーから仕入れて販売する方式をとっている。このときキャリアはユーザーが長期間契約して通話料・通信料を支払ってくれることを期待し、できるだけ安く端末を提供する。その価格は仕入れ値を下回るのが普通で、古くなって型落ちした端末なら1円で売られることも珍しくない。これを業界では「キャリアがインセンティブを付けて売っている」と表現する。


 これはよく耳にする販売方法ですし、なじみの深いゲーム業界も、「ハードで損してソフトでもうける」のが常識となっていますので、理解は難しくありません。では、これがシェアと何の関係が?

 ここまで話した上で、夏野氏は刺激的な表現を使う。「つまり純増シェアを上げると利益は下がり、純増シェアを落とすと利益が上がる」。端末を安売りすれば、より多くの端末を売ることが可能だが、その分仕入れ値と販売価格の間の赤字は大きくなる。

 「それなのにマスコミはどこの純増シェアが上がったと書きたてる。これはおかしな話ではないか?」


 もちろん、「それが一番わかりやすいからですよ」と言うのは野暮なんで・・・
 確かに、端末の価格を安くすることで純増シェアは伸ばせるが、その分の赤字を補填するための、「ユーザーを離れさせない努力」がより多く必要になる・・・それで、通信料まで安くしていたのでは確かに悪循環ですね。

 夏野氏は、他社の端末とドコモの端末の販売価格の差を上げてから、下記のように続けたようです。

夏野氏は、純増シェアというものは短期的なキャリアの施策や戦略が大きく関与するものだとして、累積シェアや企業の利益率にも注目すべきだとアピールする。「ドコモも最新の携帯を0円で販売すれば、シェアは上がる」。端末価格値下げがそのままシェアアップにつながるかはともかく、ドコモが端末を高い価格で販売しながら一定シェアを占めていることは確かだ。

 結局は、「どう利益を保っていくか」という点につきると思うのです。話の筋から考えると、最初に端末を安く売り、赤字を出す・・・つまりシェアを短期的に伸ばすことは、それだけ「リスクを背負い込むこと」だと言うことです。ですから、短期的なシェアを追うよりも、長期的な利益率を見る方が重要である、という考え方だろうと、私は理解しました。

 それだけに、新規参入者に対し、

「安売りで勝負を仕掛けてくる限りは、脅威ではない」と一笑に付す。「価格だけなら、いつでも下げられる」

と強気な発言を出せるのでしょう。彼の理論によれば、それは全く正しいですし。ですから、

ただし、新規参入事業者がドコモが考えつかなかったサービスを思いつき、それを実行に移してくる可能性もある。「そのときは、新規事業者は脅威になる」と夏野氏は慎重な姿勢を見せた。

 顧客を奪い、かつ別キャリアへの流出を防ぐ事ができる新たな試みを新規参入者が持つことは、彼にとって一番気がかりなことのようです。

 今現在、携帯のシェアだけならば、まさに群雄割拠の状態です。それだけに、「いかに現在のシェアを維持していくか」というのが、新規顧客を開拓するよりも重要だと氏は考えておられるようで、そのあたりが今回の様な発言につながったのでは、と思います。
 戦略というのは、様々な段階がありますので、この考え方がそのまま他社に通用するわけではありませんが、「キャリアを継続的に維持していく」という業界の中で、ドコモの位置というものを再確認するのに最適な記事だったのではないかと考えています。

 ・・・いや、私はauに行こうかと思っているんですけどね。