こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生あっという間、私の時間もあと少し。
よりよく生きるにはどうしたらいい?

サステイナブルな病理医に

2020年09月02日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと
病理診断は手術室などで患者さんの組織が切除されたあと、病理診断科に提出され、病理医が検体を適切に診断できるように処理した後、臨床検査技師が薄切したあと、染色を行い、特殊染色(特定の疾患を診断するのに適した染色、免疫組織化学も含む)込みでの標本が出来上がるまで数日のタイムラグがある。人数が多ければ、病理診断科を24時間、365日開けておくこともできる。昔、ナイトホスピタルという、仲間由紀恵が出ていた夜だけやっている病院で病理医が結構重要な役割を果たしているドラマがあったが、あれを昼間もやったらそうなる。私の勤務先は病理医1名、臨床検査技師4名(常勤2名、非常勤2名)なので、そんなことは到底無理。パートの病理医に来てもらうということもありだけど、専門病院なので、希少症例となるとあてにするのは申し訳ない。だから、今回も金曜日に検体が採取され、週末をはさんで昨日までに標本を完成させてもらった。今朝から、標本を診て診断をつけ、昼には臨床医とディスカッションして報告した。

日本中を探せば、私程度の診断ならこなすことのできる病理医はいなくはないが、それぞれその病院の常勤として働いていて、私のほかにもう一人二人とはなかなかいかない。一般的な病気だったら、外注という方法も無いことはないが、外注できるような病気はごく少数。それに、そういう症例の診断はそれほど時間もかからないので、外注するまでもない。外注に出せないようなややこしいのはその十倍ぐらいの時間がかかるので、結局、診断時間はトータルではせいぜい1割増しぐらい。外注などして”病理は外に出しているから(楽なんじゃない?)”なんて思われてもしょうがない。

もう1日休んで、息子の結婚式だのなんだのの旅行の疲れを取る予定だったが、ディスカッションが出来てよかった。今日休む予定ということを知らせておいたにも関わらず、そのことをすっ飛ばして入っていた迅速診断の予約。私が夏休みを1日前倒しにしたという知らせを受け、改めて予約が入れなおしてあった。

そして、なんやかんやで仕事に来れば来たで、標本の山。病理診断は臨床の現場と違って時間の経過とともに流れて行ってくれることはない。患者さんの容態がよくなろうが悪くなろうが、標本は診断をつけるまでは”そこにある”ので、この山を片付けるまでは仕事は終わらない。
こんな時、誰かと廊下ですれ違い、あれ?先生、休みだったんじゃないですか?どうしたんですか?なんて言われ、かくかくしかじかで、と説明すると、昔はちょっと頑張ってるでしょ感があって充実感というかそんな気になっていたが、今は体の方が心配になる。今日も、何人かにそう尋ねられた。ちょっとしんどいと思うと、これでよかったのかと思ったりもする。もちろん、患者さんのためになったのだから、悪いわけはない。なんといっても、医者の第1の命題は、患者さんの健康であり、病理医の第一の命題は患者さんの健康のための診断だ。だが、病理医にはサステイナブルなことはとても必要だし、とくに私のような専門領域に従事する病理医は余計にそうだと考えるのだ。
やる気も大事だが

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