”ダビンチ手術”というのがある。da Vinci Surgical System(ダ・ヴィンチ・サージカルシステム、ダ・ヴィンチ外科手術システム)という、アメリカで開発されたロボットを使っての手術のことをいう。日本で保険収載されているのが、前立腺癌に対する手術。前立腺という臓器は骨盤底の奥という狭くて容易に手を突っ込むことのできないところにあるのだが、ロボットの力を使うことによって狭いところに入ることができるようになり、従来よりもはるかに侵襲の少ない方法で手術を行うことができる。この技術はそもそも戦争の時に遠隔操作で手術ができるようにするという発想が元だったらしいが、平時の医療現場にも外科医の存在が不要になるかもしれない。
戦場ではないけれど、一般社会でも医者そのものの仕事がAI、ロボットによって代行されつつある。医療の均てん化というのは、医療の地域格差の軽減であり、最終的には医者ごとの能力差の解消というのが目的となる。一般的な医者なら同じような診断、治療を行うことができるようになるに違いない。
スマホカメラの進歩も著しいから、そのような画像診断を組み合わせたら、トリアージぐらいはスマホ経由で医療AIを搭載したロボットがやってくれるようになるかもしれない。そうしたら、救急医療の現場の負担も随分減るだろう。働き方改革にもつながる。
多分そこで問題になるのは、AIを使って医療を行う医者ではなくて、AIが対応できない事象に対応できる医者の育成だ。どの程度のことをAIにやらせるようにするのか、AIに何をやらせるのか、そういったことを考えることのできる医者は一定数必要だ。そのためには、結局のところ医学部教育は必要となる。
病理の業務は数年のうちにAIが導入され、働き方は大きく変わっていくだろう。ただ、病理医が扱うのは人間の体から採取された臓器。どういう角度から見て、どういう切り出しを行なって、その疾患の診断、治療、病態解明につながるかということを考えながら研鑽を積み仕事をしていかなくてはいけない。
まとまりのない話になってきてしまったけど、このテーマ、現在の様々な医療技術の進展状況を検討して述べなくてはいけない。量としては新書1冊分ぐらいになってしまいそうな話で、こんきも1、2回で済ませることのできるようなものではない。それに、このテーマ、2、3年先には予想とは違う展開となっているだろうから、大恥をかかないうちにこのくらいにして今日のところは終わります。
なお、病理学会のAI導入についての取り組みに興味がある方は、病理画像情報集積プラットフォーム構築事業のページを参照願います。
大阪万博の頃にまた書くか