昔の人は、現代人に比べたら人間をよく見ていたのではないかと思う。というのも、今の世の中誰かと一緒にいても、電話やメール、ラインがはいってきたらそちらに気を取られてしまって、一人の人とじっくり語り合うことが事実上不可能になっているからだ。だから、目の前の人のことをつぶさに観察するということができない。
私などは、携帯メール出現過渡期の人間だ。だから、話している途中でメールをチェックする人をみて最初はたいそう面食らった。今では、自分にラインが入ってきたら、とりあえずはスマホの画面に目をやるようになっている。その瞬間、目の前の人との関係は中断されている。これでは、相手の人のことなどわかりはしない。
もちろん、大事な話のときはスマホを切っておくなどするが。
で、こんな文明の利器がなかったころの昔の人たちは、人間のことをよく見ていたのではないかと思う。この文明の利器が生み出されたことが人類にとっていいのか悪いのかはわからない。
ただ、こんなものがなかったら人間観察のみならず、自然観察にしても今よりずっと深くなされていたのではないかと思う。
人間をよく見たら、人間に対して優しくなれるし、自然をよく見たら、自然に対して優しくなれるのではないか。
だから、それらをよく見ることが難しくなっている現代社会というのは他者に対して優しくなることが難しくなっているのではないかと思えて、困ったものだと感じる。