勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 / The Post

2018年04月01日 | 洋画(アメリカ系)
事実を下にした作品。

1971年に起きた、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」のスクープに関連する、ワシントン・ポストの発行人キャサリン・グラハムと編集主幹ベン・ブラッドリーの活躍を描いています。

この話が、【今の】アメリカで作られたのは、何らかの意図があるんでしょうか?当時のニクソン政権の悪辣さは、今の時代、詳らかになっていますが、現トランプ政権も、ニクソン政権と似た感じで、ホワイトハウスに権限を集中させて“仲良しだけによる”政治を推し進めようとしています。ニクソンの場合は、その悪辣さから、最終的には自滅して辞任に至ったわけですが、トランプの場合はどうなるんでしょうね?意外に思ったよりも長持ちしていると思うんですけどね。今年の中間選挙がどうなるか・・・。ますますアメリカ国内の分断が進むような気がして仕方ありませんが。

それともう一つ羨ましいのは、司法が機能していたと言う事。一審では被告(NYタイムズ)勝訴、連邦政府の上告を受けた控訴審では原告(アメリカ連邦政府)勝訴。そして、最終的な決着の場となった上告審の最高裁では、6対3と多数決で被告側(NYタイムズとワシントンポスト)の勝訴となったのは作品の通りですが、政府に与することなく、きちんと憲法の精神に則って判断したのは羨ましいです。もっとも、もしかしたら、ニクソンの前はJFKであったので、その際にリベラルな判事が任命されて、判事の優劣がリベラル優位になっていたのかもしれませんが、そこはちょっとわかりません。

あぁ、こんな新聞社が日本にもあったならば、今の安倍内閣の“麺類疑惑”は、もっと解明が進んでいたのではないかと思わずにはいられません。

最後ですが、これもなぁ“邦題あるある”ですね。だってさぁ、この作品が描いているのは、報道の自由を守り通そうとするワシントン・ポストな訳で、決して、ペンタゴン・ペーパーズじゃ無いんですよねぇ。だから、その“添え物”のペンタゴン・ペーパーズがタイトルのメインに来るのは違うんじゃないかと思います。そういう意味では、やっぱり原題は、しっくりきますね。

タイトル ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 / 原題 The Post

日本公開年 2018年
製作年/製作国 2017年/アメリカ
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 メリル・ストリープ(キャサリン(ケイ)・グラハム/ワシントン・ポスト紙社主・発行人)、トム・ハンクス(ベン・ブラッドリー/ワシントン・ポスト編集主幹)、サラ・ポールソン(トニー・ブラッドリー/ベンの妻)、ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン/ワシントン・ポスト編集局次長・記者)、トレイシー・レッツ(フリッツ・ビーブ/ワシントン・ポスト取締役会長)、ブラッドリー・ウィットフォード(アーサー・パーソンズ/ワシントン・ポスト取締役)、ブルース・グリーンウッド(ロバート・マクナマラ/国防長官)、マシュー・リス(ダニエル・エルズバーグ/ペンタゴン・ペーパーズの執筆者の一人)、アリソン・ブリー(ラリー・グラハム・ウェイマウス/キャサリン・グラハムの娘)、マイケル・スタールバーグ(エイブ・ローゼンタール/ニューヨーク・タイムズ編集者)

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 / Darkest Hour

2018年04月01日 | 洋画(イギリス系)
チャーチルの第一次内閣発足から、ダイナモ作戦(ダンケルク大撤退)までの4週間を描いた映画。

ゲイリー・オールドマンが第90回アカデミー賞で主演男優賞、辻一弘が同じアカデミー賞で、その主演男優賞のゲイリー・オールドマンを似ても似つかないウィンストン・チャーチルに“変身”させた事で、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。

ダイナモ作戦(ダンケルク大撤退)と言えば、昨年、クリストファー・ノーランの『ダンケルク』がありましたが、その撤退作戦に至るまで、イギリス政府指導部の内部では、こんな政治的な暗闘が繰り広げられていたんですね。チャーチルが、首相就任の頃、ここまで仲間の政治家たちに人気が無いとは知りませんでした。“挙国一致内閣”と言いながら、全然挙国一致していない。隙あらば足元を掬おうとしている政敵ばかり。リアルに国家の危機に瀕しているのに、議会政治の先進国であるイギリスにおいてすら、こんな状況なのかと、驚きました。まだまだ議会政治の世界で言えば野蛮な国である日本が、下らん政治的駆け引きに終始しているのも仕方ないのかな・・・。

それと思ったのが、いつの時代も、政党を移るような政治家は、政治家から嫌われるんですね・・・。日本でもそうですよね。

って言うか、乱世には暴れん坊・・・。日本でも、戦後の乱世の時代、チャーチルとどことなく風貌の似ている吉田茂が首相になって、長期政権を築いたことに気が付きました。政治家仲間から、なんとなく嫌われているのも似ていますね。

映画の話に戻ります。

ゲイリー・オールドマンがチャーチルを熱演していますが、彼の強気一辺倒のところだけではなく、党派争いで弱気になったり、アメリカからの援助を得ることが出来なくて絶望の淵にたったりと、様々な表情を上手く演じています。確かに主演男優賞モノですね。

上記の通り、似ても似つかないゲイリー・オールドマンがチャーチルになってしまったのですが、それ以外にも、顔を知っている人で言えば、チェンバレンも何となく似ていました。

最後ですが、微妙に“邦題あるある”に汚染されていますね。確かにチャーチルは、ヒトラーに勝ったわけですが、この作品は、その最後のところまでは映画いておらず、政権当初の立ち上がりの部分だけを描いています。そういう意味では、“ヒトラーから世界を救った男”と言うのは、言い過ぎでは無いかと?

タイトル ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 / 原題 Darkest Hour

日本公開年 2018年
製作年/製作国 2017年/イギリス
監督 ジョー・ライト
出演 ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル)、クリスティン・スコット・トーマス(クレメンティーン・チャーチル/ウィンストンの妻)、リリー・ジェームズ(エリザベス・レイトン・ネル/ウィンストンの秘書)、スティーブン・ディレイン(ハリファックス子爵エドワード・フレデリック・リンドリー・ウッド/外務大臣)、ロナルド・ピックアップ(ネビル・チェンバレン/枢密院議長)、ベン・メンデルソーン(国王ジョージ6世)、ニコラス・ジョーンズ(サイモン子爵ジョン・オールスブルック・サイモン/大法官(貴族院議長))、サミュエル・ウェスト(アンソニー・イーデン/陸軍大臣)、デビッド・バンバー(バートラム・ヒューム・ラムゼー提督/ダイナモ作戦(ダンケルク大撤退)責任者)