勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

ボビー(2006年)

2007年02月24日 | 洋画(アメリカ系)
1968年6月5日。民主党の大統領候補ロバート・F・ケネディ(RFK)が、カリフォルニア州予備選挙の勝利直後に暗殺されたその日に、様々な理由から暗殺現場となったアンバサダー・ホテルに集っていた、様々な人々のその日を描いた映画です。RFK暗殺は実際の出来事ですが、この映画自体は完全なフィクションです。長期化するベトナム戦争で漂う厭戦ムード。若者に蔓延するマリワナやLSD。激化する公民権運動。そんな1960年代の時代背景が、上手に映されています。そう言う時代背景を知っていたほうが、この映画をより理解できます。

この映画は『ボビー』と言うタイトルですが、当のボビー(RFK)本人は、一応、背面からのショットやぼやけたシルエットで表現されていますが、当時のニュース映像以外は実際には出てきません。その意味では、この映画の主役は”アンバサダー・ホテルとそこに集う人達”なのかもしれません。ちなみに、RFK暗殺の現場となったアンバサダー・ホテルは、2005年に取り壊され、現在は存在しません。その取り壊しの最中に、一週間だけこの映画の撮影を許され、ロビーなどが資料映像として撮影されました。

豪華な俳優が多数出演していますが、様々な人々のごく普通のある一日を描いているので、特に特筆すべき演技と言うのは目に付きません。もっとも、そう言う、ごく普通の日常と言う演技が難しいのかもしれませんが。あ、でも、シャロン・ストーンが、ああいう格好をすると、ちょっと彼女とは気が付きませんでした。

何故今のこの時期にRFKなのかと考えてみましたが、物語終盤のRFKの演説のシーンでそれがわかったような気がします。RFKの演説の”ベトナム戦争”と言う言葉を、”イラクでの戦い”と置き換えると、まさに、今のことを言っているのではないでしょうか。終わりの見えないイラクでの戦いが、当時のベトナム戦争と重なっているのは間違いありません。その他も、広がる経済格差や環境問題、これらはまさに、当時と今に共通する課題です。多分それが、この映画に込められたメッセージだったのではないでしょうか。奇しくも、今年は来年の大統領選挙に向けての予備選挙の年。その意味では、絶好のタイミングでの公開でしょうね。

物語のほぼ最後に、RFK暗殺のシーンが出てくるわけですが、何故だか意味も無く泣けてきましたね。なんか、希望の光が打ち砕かれたような気がしてしまいました。映画を見た現代の日本人の私がそう思うのですから、実際に当時のアメリカ人が受けた衝撃と言うのは、如何程のものだったのでしょうか? 決して楽しい劇映画と言うわけではありません。しかし、温故知新。この映画を見ると、過去から学べることは沢山あるような気がします。

タイトル ボビー
原題 Bobby
日本公開年 2007年
製作年/製作国 2006年/アメリカ
監督 エミリオ・エステヴェス
出演 アンソニー・ホプキンス、デミ・ムーア、シャロン・ストーン、リンジー・ローハン、イライジャ・ウッド、ウィリアム・H・メイシー、ヘレン・ハント、マーティン・シーン、エミリオ・エステヴェス、クリスチャン・スレイター、ローレンス・フィッシュバーン、ハリー・ベラフォンテ、アシュトン・カッチャー、ジョシュア・ジャクソン、スヴェトラーナ・メトキナ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョイ・ブライアント、ニック・キャノン、ブライアン・ジェラーティ、シア・ラブーフ、デイヴィッド・クラムホルツ、ジェイコブ・ヴァルガス、ヘザー・グラハム、フレディ・ロドリゲス

[2007/02/24]鑑賞・投稿