たんなるエスノグラファーの日記

エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために

プナンは動物になり、ベゾアール石はダイヤモンドより高価なり

2014年03月21日 23時41分57秒 | フィールドワーク

2014年春のサラワク調査行。

前半は、B川の上流のプナンの調査、後半は、R大のIさんといっしょに、プナンを含む、サラワクの先住民が捕るヤマアラシの胃のなかに時折見つかる胃石、いわゆるベゾアール石の一つの流通と消費の調査を行った。

前半には、動物との感情的・身体的な一体化と動物譚(神話)に関して、プナン人から聞き取り調査などを行った。
プナンは、野生動物に慣れ親しみ、動物の身体動作を身に着ける。あるいは、人間の条件を薄めて、動物に近づいたり、動物になったりする。
そのことが、結果的には、動物を仕留めるという、彼らの暮らしのど真ん中にある狩猟行動に大いに役に立っている。
動物と一体化することと、動物を殺すことは、けっして論理的に矛盾するのではなく、複・論理的なものとして作動している。
写真は、夜に狩猟に行ったときに捕れたジャコウネコの一種。
プナンは、色や模様によって、ジャコウネコを14種に分けているが、そのうちの一つ。
焼いて、塩をまぶして食べたが、脂が乗っていて、絶品だった。



後半は、サラワクでは、先住民の村、川沿いの町、沿岸部の都市、マレー半島では、二つの都市を移動しながら、マルティ・サイテッド・エスノグラファーになって、調査をした。
写真は、檻で捕まえたヤマアラシを餌付けして、胃石ができたころを見計らって、ヤマアラシから取り出された胃石。
ふつうは、サラワクの先住民の狩猟によってごく稀に胃のなかから取り出されたマアラシの胃石は、ミドルマンである華人商人の手を経て、その薬用消費地であるマレー半島へともたらされる。

価格は、流通段階で3~4倍に跳ね上がり、なんと、マレー半島では1グラムあたり80,000円ほどで売られている。
ヤマアラシの胃石は、ダイヤモンドよりも高価だと、あるミドルマンが言った。
そのおかげで、ヤマアラシの胃石を見つけたプナンのなかには、車を買った者もいる。
あたかも旧石器時代人のような暮しをしているプナンにとって、それは、「胃から飛び出た現代」のようなものである。


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