“氷姿雪魄”に背のびする……しろねこの日記

仕事の傍ら漢検1級に臨むうち、言葉の向こう側に見える様々な世界に思いを馳せるようになった日々を、徒然なるままに綴る日記。

『日本人として知っておきたい日本語150 の秘密』(彩図社)

2016-08-16 13:42:58 | 日記
お盆休み中に届いた「漢検生涯学習ネットワーク会員通信 vol.22」を、いつになくゆったり読んでいたところ、兵庫県の古川さんという方の合格体験記の中に、
「ベレ出版で田中春泥さんの『書けなくてもいいけど読みたい漢字』を書けるようにするべきです」
とあったのを、本当にそうだと懐かしく思い出しました。このご著書について、はるか昔(7年前)2009年8月24日の記事で、ものすごく地味にしろねこもご紹介していて、当時自分でもよく拝読していたのです。
因みにこの田中春泥さんの続編として、四字熟語編も出ていましたが、果たしてあれを私は購入したのでしたっけ、確かしたはず……とうろうろ思い出そうとするのですが、震災前の纏まった荷物の中にあり、同僚の何人かもそうなのですが、なかなか改めて出して整えるということをしていなくて、今年の夏も過ぎ行くことになりそうです。
震災前に嬉々として購入していた漢字本が結構あって、どれも好きだったので丁寧に読み返したいのですが、震災後増え続ける新たな資料に呑まれています。こんなでは人生いけないのでしょう。
また明日から、本格的に生徒と授業です。


――で、月日は流れ、7年後のこの夏、しろねこが読んでみたご本は仕事分も含めていろいろありましたが、その中で、しろねこの近所のコンビニに置いてあった『日本人として知っておきたい 日本語150の秘密』(彩図社、沢辺有司氏、平成28年8月25日第一刷)についてご紹介します。

沢辺有司さんのご本を拝読するのはしろねこは初めてですが、書店でもつい最近、タブー視された映画のお話が書架に置かれているのを見かけたりしています。
タイトルのとおり、本書は150の項目で日本語のあれこれが解説されているのですが、最後の150個目が用語表記の統一について書かれていて、共同通信社刊の『記者ハンドブック――新聞用字用語集――』に筆者が言及しているのは、いかにもライターさんらしいかもしれません。

150の項目は6つの章に分けられていて、日本人の漢字使用に関しては、第四章の「戦前・戦後で変わった日本語」の中に詳しいです。2020年の次期学習指導要領や、2018年からの小学校教育を視野に入れた考察が所々入っているので、教員としても考えさせられるところです。
1年ほど前、『人名用漢字の戦後史』(岩波書店、円満字二郎氏、2005年7月20日第1刷、多分これまでの円満字さんの御著書の中で最も硬派な内容)を法律の苦手な私がどうにかこうにか拝読し切ったこともあり、当用漢字成立から常用漢字への変遷を、ある程度の実感を伴って駆け足で概観することができました。

本書『日本語150の秘密』を拝読していて、自分がこれまで深く考えず、曖昧に受け入れていたいくつかの言葉の由来について、解説を目にしました。例を挙げると、

・ふりかなの発生はいつごろか
・指の名前の変遷
・日本語の横書きの発生
・五十音図の現在の配列はいつからか
・今でも横書きの文書で「、」でなく「,」を使うのはなぜか(これでやっと、職場で心底納得して使い分けができる…!)
・日本語に助数詞が多い理由
・「元旦の朝」はよくない表現(しろねこの場合、本書で投げかけられている「元旦」と「元日」の違いは言えるものの、上記の表現は無意識に使ってしまいそうだ)
・「行なう」が認められているのはなぜか
・手紙の頭語と結語はそれぞれいつごろ成立したか
・「形容詞+です」が認められるようになったのはいつか
・なぜ「全然〜否定表現」が日本で固定されるようになったか(よく「国語の先生でしょ」と訂正されるのですが、しろねこは「全然+肯定表現」を使うのがなぜだか気に入っていて、未だに止めていません)

などなど。
しろねこは人に教える職業なのに、知らないことがありすぎて、勉強するたびに日本人としても、どうなんだろうと改めて悩んでしまいます。
単に読み書きできるのは、それができないより、かなり怖いこと。それを肝に命じながら、言葉と接していきたいと思います。

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