“氷姿雪魄”に背のびする……しろねこの日記

仕事の傍ら漢検1級に臨むうち、言葉の向こう側に見える様々な世界に思いを馳せるようになった日々を、徒然なるままに綴る日記。

円満字二郎氏『語彙力をつける入試漢字2600 』と2月の新刊

2020-01-18 10:50:21 | 日記
今年初めての投稿です。
今年も宜しくお願い申し上げます。

早くも今日はセンター試験1日目。しろねこはもうここ暫く高3を担当していませんが、学年全員の受験を陰ながら応援しつつ、自分の担当する中3を卒業まで引っ張ります。

さて、タイトルにある『語彙力をつける 入試漢字2600』は、昨年10月に刊行されましたが、これは円満字氏の20冊目のご著書となるようです。
しろねこが初めて円漢字氏の文章(大修館書店HP 漢字文化資料館 漢字Q&A)を拝読したのが2010年冬なので、ご著書で言うと、8冊目の『数になりたかった皇帝 漢字と数の物語』(岩波書店)刊行後の時期に当たります。そして、ご著書自体を拝読するようになったのは、12冊目の『ひねくれ古典『列子』を読む』(新潮選書)が2014年夏に刊行された後からになります。それから過去に遡ってすべてのご著書を拝読し(ただし、ときかあしシリーズは部首のみ完読)、ブログ・寄稿・連載・刊行物など、入手・拝読可能な限りは殆どすべて目を通してきました。そのようなわけで昨年末、学校勤務の国語科教員として、その円満字氏のご著書が採択見本として職場に届き、採択会議の場に並べられている光景を目にするのは、たいへんにうれしいことでした。
また、大きな書店で大学入試漢字問題集の並ぶ棚に、ご著書も1冊並べられているところでいろいろ見比べてみましたが、解説の丁寧さ、情報量の多さに対する見やすさは格別であると思います。解説中のふりがなの音訓まで仮名の区別がきちんとされてあり、ふりがなのところまで赤い字になっている(赤黒の二色刷)ことがあるところなど、解説の精度も高いです。特に、訓読みの要素をとても大事に解説してもらっているありがたさ。問題で取り扱った語の索引は、頁だけでなく問題番号まで付されていて引きやすい。漢字基礎知識についてのコラム・巻末の解説は、勿論親切で分かりやすい。

目次は以下のとおりです。
大学入試問題の出題傾向の分析内容と、漢字というもののもつ側面を精緻にクロスさせ整理された章立てではないでしょうか。


本書の特色と活用法
第Ⅰ章 基本語の読み書き
①音読み基本語の書き取り
②訓読み基本語の書き取り
③基本語の読み
◆実戦テスト
【コラム】音読みと訓読みの違い
第Ⅱ章 漢字の意味と書き取り
①書き取りランクA
②書き取りランクB
③書き取りランクC
◆実戦テスト
【コラム】二字熟語の構成
第Ⅲ章 漢字の注意すべき読み方
①読みランクA
②読みランクB
◆実戦テスト
【コラム】複数の音読みにどう対応するか?
第Ⅳ章 間違えやすい漢字
①同音異義語の書き取り
②同訓異字の書き取り
③形が似た漢字の書き取り
◆実戦テスト
【コラム】部首の知識を役立てよう!
第Ⅴ章 常用漢字表の範囲外の漢字
①表外漢字と表外音訓の書き取り
②表外音訓の読み
③表外漢字の読み
◆実戦テスト
【コラム】常用漢字とはどのようなものか?
第Ⅵ章 四字熟語と慣用表現
①四字熟語
②慣用表現
◆実戦テスト
【コラム】四字熟語学習のポイント

漢字について
索引


そして、ご著書『漢字の使い分けときあかし辞典』でもそうですが、なんといっても、例文を拝読するのが個人的には楽しみでなりません。円満字氏の例文は、紋切り型なものが少なくて、その例文からあれやこれやと場面を思い浮かべたり、ストーリーを想像していったりするのが楽しいものが多いのです。たとえば、
「笑ってないで、真面目に話そう。」(表外漢字の読みの章、「まじめ」の読み問題)、
「気になる相手に無関心をヨソオう。」(訓読み基本語の書き取りの章、「装」の書き取り問題)
など。それに、これまでのご著書等を拝読していて分かる円満字氏の価値観が反映されている(またはその逆の価値観が描かれている)であろう例文もいくつかうかがえて
(「彼のユイイツの欠点は、イケメンすぎることだ。」(音読み基本語の章、「唯一」の書き取り問題)、
「彼が約束に遅れるなんて、稀なことだ。」(表外漢字の読みの章、「まれ」の読み問題)など)、
それもまた、ファンとしては醍醐味なのでありました。

因みに、今回の漢字問題集のすべての例文から、猫がお好きな円満字氏による、「猫」が入った例文を抽出したのでご紹介しておきます。しろねこが拝読した限りでは、19例文ありました。

・この子猫はコウキシンでいっぱいだ。(音読み基本語の書き取りの章、「好奇心」の書き取り問題)
・うちの猫は、鈴の音にビンカンに反応する。(音読み基本語の書き取りの章、「敏感」の書き取り問題)
・迷い猫のソウサクを依頼する。(音読み基本語の書き取りの章、「捜索」の書き取り問題)
・猫がネズミにオソいかかる。(訓読み基本語の書き取りの章、「襲」の書き取り問題)
・猫のトイレに使った痕跡がある。(基本語の読みの章、「こんせき」の読み問題)【←何を?庭の砂とか??:しろねこ注】
・この島に猫が増えたケイイを調べる。(書き取りランクAの章、「経緯」の書き取り問題)
・かわいい子猫が、多くの人をミワクする。(書き取りランクAの章、「魅惑」の書き取り問題)
・飼い猫の寝姿をソビョウする。(書き取りランクBの章、「素描」の書き取り問題)
・うちの猫の食欲にはサイゲンがない。(書き取りランクBの章、「際限」の書き取り問題)
・飼い猫が仕事のジャマばかりする(書き取りランクCの章、「邪魔」の書き取り問題)
・この柱の傷は、いたずら猫の仕業だ。(読みランクBの章、「しわざ」の読み問題)
・枝から落ちた猫が、タイセイを立て直す。(同音異義語の書き取りの章、「体勢」書き取り問題)
・猫が木のカゲで昼寝する。/・カーテンに猫のカゲが映っている。(同訓異字の書き取りの章、「陰/影」書き取り問題)
・眠っている子猫の写真をトる。(同訓異字の書き取りの章、「撮」書き取り問題)
・飼い猫の体重をハカる。(同訓異字の書き取りの章、「量」書き取り問題)
・箱の中から猫の鳴き声か微かに聞こえる。(表外漢字の読みの章、「かす(かに)」読み問題)
・自動車が猫を撥ねそうになる。(表外漢字の読みの章、「は(ねそう)」読み問題)
・窮鼠猫を噛む。(慣用表現の章、「きゅうそ」読み問題)


――ところで、昨年12月に更新された円満字氏HPプロフィールの連載紹介のところに、


漢字の植物園 in 広辞苑(岩波書店『図書』2018.11〜2019.10)
→単行本として刊行すべく、加筆・修正作業中!


とあるのですが、先日hontoから、以下のような案内メールが届きました。


漢字の植物苑 花の名前をたずねてみれば
円満字二郎(著)
税込価格:2,200円
出版社:岩波書店2020/02/21


ということで、来月21日日にはめでたく、円満字氏の21冊目のご著書が刊行され、近日中にしろねこも手にすることができるのです(しかもこの発行予定日、実は偶然、しろねこの誕生日ではありませんか)。
『図書』の連載は1年間、毎月拝読していましたが、こちらが終了したのとほぼ同時期に、『週刊読書人』の連載「漢字点心」も終了してしまい、少し寂しいなあと感じていたところでしたので、そのような点でもうれしいお報せだったのでした。

以上、円満字氏のご著書2冊のご紹介でした。また拝読できるのを励みにしながら、できることを全力で頑張っていきたいと思います。

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1 コメント

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追記 新刊について (しろねこ)
2020-02-24 12:33:30
この記事の最後にご紹介した新刊を予約注文していて(毎回円満字氏の新刊はそうしているのですが)、届いたという書店からのお知らせの電話をもらったのが、なんと発行予定日より1日前の20日。以後2日間は仕事のため閉店に間に合わず、手にしたのは猫猫猫日の夜でした。そして奥付けを見ると……発行日は、なんと、電話をもらった前日の、19日ではありませんか。予定日はしろねこの生まれ日でしたが、それは幻の記録となったのでした。まあ、その日までそれを原動力のひとつにしてお仕事を頑張れたので、あとはこれからゆっくりと、本文を楽しみに拝読します。
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