“氷姿雪魄”に背のびする……しろねこの日記

仕事の傍ら漢検1級に臨むうち、言葉の向こう側に見える様々な世界に思いを馳せるようになった日々を、徒然なるままに綴る日記。

湯島聖堂の漢文検定(寺子屋編漢詩上級)

2019-02-22 23:09:33 | 日記
こんばんは。今日は猫猫猫日です! 猫にかかわる日を過ごせるのはうれしいですが、もう2月も下旬かと思うと、ちょっとぞっとします。月日の経つのが早すぎる…。この冬は、幼少時代母とよく食べていた金柑を例年になく自分から進んで買って食べているのですが、おいしさのピークもいずれ過ぎてしまうのかと思うと、やや淋しいです。

さて、昨年に続き、今年も1月下旬に、職場の中学校で漢文検定(寺子屋編)を実施しました。

今回は導入2年目なので、今の3年生は2年計画、今の1・2年生は3年計画での受検になります。
うちの場合の受検内容ですが、
1年生は論語入門(10篇中本人指定で3篇暗唱)、
2年生は論語初級(10篇中ランダム指定で5篇暗唱)、
3年生は試みに漢詩初級(5篇中ランダム指定で3篇暗唱)を選択肢に入れ、今年は論語初級と選択制にしたところ、学年で3割の生徒が漢詩を選びました。残りの7割は、昨年全員が論語入門を受けていて、その馴染みの記憶を塗り直したということになります。とはいえ、直前2ヶ月間の毎回の授業では、どちらを選択した生徒にも、両方の朗唱を繰り返してもらいました。ただ本番に試されるものをどちらにするかだけの違いで、表現に馴染むのは双方すべての生徒に経験しておいてほしかったからです。のみならず、同じ理由から授業では機を見て、中級編・上級編の朗唱も取り入れていました。
中級は暗唱+筆記試験があり、上級は筆記試験のみです。惜しいことに、うちの時間枠や集金方法、学力分布、当日の管理可能な教員数等を考えると、学年の全員が中級や上級にチャレンジすることは現実的でなく、かといって部分実施も難しく、おとなしく初級までにとどまっていますが、本当は学年の1割程度には中級以上の力や意欲があるだろう、と思われます。本来の主な目的は高校漢文につなげることなので、すべての生徒が漢文・漢詩の表現に馴染んでくれればそれでよいのですが、記憶の温かいうちに純粋に資格を取りたい子もいるだろうなあ、とも思うのです。

余談ですが先日、今年度第2回の日本語検定で、しろねこの担当する中3で2級を一発合格した女の子が1人出ました。4年前、前回受け持った中3の女の子からも1人、初で出てそれ以来なので、やはりこの年頃だと言語系に強いのは女子なのか、それともしろねこの指導は女子の方がついてきやすいのか、と悩むところです。そもそも語検自体、女性の受検率が高いはずではあるのですが……。話がそれましたが、そういう力を持った生徒が公式で力試しのできる場を、本当はもっとたくさん作りたいと思ったりもしています。

――そんな中、今回も昨年に続き、しろねこ自身も生徒が受検を終えた後、寺子屋編漢詩上級にチャレンジしました(昨年は論語上級)。漢詩上級は、初級〜上級編の計20篇が範囲です。冒頭の画像が、先日届いた合格証と全問正解証(中級以上が対象。しろねこも昨年もいただきました)と、暗記するために作ったノートの一部です。合格証の文面に「茲」が使われているところなど、やはり、漢文〜♪という雰囲気を出していますよね。
勉強には昨年同様、テキストをもとに作成したノートと、テキストを自分ですべて朗読したボイスレコーダーを使いました。ただ、論語と漢詩の大きな違いは、まず論語が孔子の教えか弟子の発言であるのに対して、漢詩は作者がみんな違うということ。また論語が地理的なことを(暗唱する分には)気にしなくてよいのに対して、漢詩は地図がないとまずイメージの区別がつかない、ということでした。
試験には作者のことが出るか不明だったので、ひととおり年表も作り日本人の漢詩も各級1篇ずつ出るので、そのあたりも多少調べました(実際は上級だと、書き下し文、すべて平仮名の書き下し文、漢字の空欄補充、訳(しかも選択肢)だけでした。おそらく修了試験の方がもっと記憶試しができるのでしょう)。また高校向け国語便覧の中国の地図で、舞台となる地名があれば長江流域や黄河流域を探し、20篇中19篇が絶句なので、起・承の色彩などの対比と、転・結の内容とが食い違わないように、一生懸命つなげてイメージして何とか覚えました。和歌を覚えるときに、上の句と下の句を違って付け替えてしまうことがないように苦心することがあるのと同様の努力が必要となりました。
さらに、「すべて平仮名の書き下し文」の練習をしつつ、この漢文検定は歴史的仮名遣いではなく現代仮名遣いなので、普段古典の授業で使う感覚を消すのに多少苦労しました。加えて紛らわしい同訓や間違いやすい訓読みのチェック、癖になっている間違った送り仮名のチェックも最後まで繰り返しました。
検定日の数日前には、20篇すべての書き下し文を何も見ずに思い出した順から書き出すということをしてみたのですが、19篇書けて、最後の1篇がどうしても出てきません。答え合わせをしたら、畏れ多くも詩仙李白の「廬山の瀑布を望む」でした(汗)。

日は香炉を照して 紫煙を生ず
遥かに見る 瀑布の長川を挂くるを
飛流直下 三千尺
疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと

…「銀河」といえば、かつて漢検で書けなかった「河漢」という語が浮かんでくる……そうか、本当に漢検1級に精通している人は、きっと自分が20篇の詩をランダムで書こうとするように、頭の中で6000字余りが系統立っていて、確実にアウトプットできるのだろうな(書き出すのに何時間かかるものなのか?)、とふと思い当たったのでした。
天の川の無数の星を眺めるように、何千という漢字を追いかけて、無数の表現や文学を追いかけて、……途方もないけれど、やっぱり、死ぬまで退屈はしないな、自分が何かを感じる心は、どのような境遇になってもなくしたくないな、と思うしろねこなのでありました。

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