“氷姿雪魄”に背のびする……しろねこの日記

仕事の傍ら漢検1級に臨むうち、言葉の向こう側に見える様々な世界に思いを馳せるようになった日々を、徒然なるままに綴る日記。

『新しい漢字学習法漢字音符字典増補改訂版』(第1刷) 通読

2019-02-23 07:02:00 | 日記
ずっとしたくて出来なかったことのひとつ、『新しい漢字学習法 漢字音符字典 増補改訂版』(山本康喬氏 編著、東京堂出版、2012) の通読を、今年の1月に漸く出来ました。

しろねこが本書を購入したのが3〜4年前で、ずっとパラパラ読みしか出来ず、後ろ髪を引かれながらも日々の仕事に追われ、なかなか継続的に手に取れないでいました。

字典の通読といっても、何を以って通読とするかは人によると思いますが、現時点のしろねこの場合は、順にページを開いていって、ひとつひとつの音符とその家族(各音符に属する漢字に対する、本書での呼び方)を目で追っていき、それぞれの字の下に記されている音訓を確認しながら、
・「よく知っている」「ひとつでも熟語や引用文が意味と共に浮かぶ」字ならノーマーク、
・「うろ覚え」「区別が怪しい」「存在をよく記憶できていない」字なら(極細の)黄色い付箋、
・「紛らわしい」家族同士(またはご近所さん)なら互いに(極細の)緑の付箋
を付けていき、次の機会にそこを開いたとき、付箋をつけたところに意識を持っていきやすくする紙面を作っていく作業を指します。蛍光ペンでなく付箋にするのは、後々自分の記憶の様相が変化した際には、それに合わせて貼り替えられるようにするためです。

本書では訓の多い漢字も代表的な訓読みが整理されていて、しろねこのように曖昧な記憶がまだまだ多い人には、漢検要覧や漢検漢字辞典と併用する上で非常に助かります。とくにしろねこのように自宅に殆どいられない生活をしていると、数冊を落ち着いて机に置いて引き比べる作業がまとまった時間ではなかなかできないので、そのようなときでも音訓の確認をしたいとき(しかも電子媒体で気分が乗らないとき)に、非常に助かります。

辞典や字典を見ていくとき、しろねこは何度か書いている通り、「ア」行からまともに行くと挫折する率が非常に高いので、今回も、早く済む「タ」行以降を先に読み、「ワ」行・音符ごとに分類されない漢字・国字まで終わったら、「サ」行〜「カ」行と長い道のりを遡っていき、最後に「ア」行で完結させました。必ず前から読まないと理解できないもの以外は、このように途中から入っていくようにしています。

また、字典本編のみならず、その前に付してある、本書の編著者である山本氏による約30ページの文章「漢字音符字典の開発」第一章・第二章も、最後まできちんと通しては読みきっていなかったのでずっと気にかかっていて、この度やっと拝読し終えました。最近漢字関係に限らず、隙間時間があっても通読が上手くいかなかったいくつかのものを読みきることが出来ていて、本書もその中の一冊でした。

山本氏の文章を拝読していると、ご自身が漢字の学習を積み重ねる過程で一つひとつ手繰り寄せ集めていった手がかりを、すべて学習者のために分かりやすく丁寧に整理し、やさしく手渡してくださっているような印象を抱きます。本書は部首や音読みを基準に編集された辞典では解決しきれない、「この漢字を同じところに並べて見比べたい!!」という欲求を見事に叶えてくれており、それらの漢字が一堂に会するさまを目にすることができ、第一章の解説の文章を読み合わせると、たいへん感慨深いものがあります。
やっと一度目の通読ができたので、重ねていろいろな拝読の仕方を続けていきたいです。

湯島聖堂の漢文検定(寺子屋編漢詩上級)

2019-02-22 23:09:33 | 日記
こんばんは。今日は猫猫猫日です! 猫にかかわる日を過ごせるのはうれしいですが、もう2月も下旬かと思うと、ちょっとぞっとします。月日の経つのが早すぎる…。この冬は、幼少時代母とよく食べていた金柑を例年になく自分から進んで買って食べているのですが、おいしさのピークもいずれ過ぎてしまうのかと思うと、やや淋しいです。

さて、昨年に続き、今年も1月下旬に、職場の中学校で漢文検定(寺子屋編)を実施しました。

今回は導入2年目なので、今の3年生は2年計画、今の1・2年生は3年計画での受検になります。
うちの場合の受検内容ですが、
1年生は論語入門(10篇中本人指定で3篇暗唱)、
2年生は論語初級(10篇中ランダム指定で5篇暗唱)、
3年生は試みに漢詩初級(5篇中ランダム指定で3篇暗唱)を選択肢に入れ、今年は論語初級と選択制にしたところ、学年で3割の生徒が漢詩を選びました。残りの7割は、昨年全員が論語入門を受けていて、その馴染みの記憶を塗り直したということになります。とはいえ、直前2ヶ月間の毎回の授業では、どちらを選択した生徒にも、両方の朗唱を繰り返してもらいました。ただ本番に試されるものをどちらにするかだけの違いで、表現に馴染むのは双方すべての生徒に経験しておいてほしかったからです。のみならず、同じ理由から授業では機を見て、中級編・上級編の朗唱も取り入れていました。
中級は暗唱+筆記試験があり、上級は筆記試験のみです。惜しいことに、うちの時間枠や集金方法、学力分布、当日の管理可能な教員数等を考えると、学年の全員が中級や上級にチャレンジすることは現実的でなく、かといって部分実施も難しく、おとなしく初級までにとどまっていますが、本当は学年の1割程度には中級以上の力や意欲があるだろう、と思われます。本来の主な目的は高校漢文につなげることなので、すべての生徒が漢文・漢詩の表現に馴染んでくれればそれでよいのですが、記憶の温かいうちに純粋に資格を取りたい子もいるだろうなあ、とも思うのです。

余談ですが先日、今年度第2回の日本語検定で、しろねこの担当する中3で2級を一発合格した女の子が1人出ました。4年前、前回受け持った中3の女の子からも1人、初で出てそれ以来なので、やはりこの年頃だと言語系に強いのは女子なのか、それともしろねこの指導は女子の方がついてきやすいのか、と悩むところです。そもそも語検自体、女性の受検率が高いはずではあるのですが……。話がそれましたが、そういう力を持った生徒が公式で力試しのできる場を、本当はもっとたくさん作りたいと思ったりもしています。

――そんな中、今回も昨年に続き、しろねこ自身も生徒が受検を終えた後、寺子屋編漢詩上級にチャレンジしました(昨年は論語上級)。漢詩上級は、初級〜上級編の計20篇が範囲です。冒頭の画像が、先日届いた合格証と全問正解証(中級以上が対象。しろねこも昨年もいただきました)と、暗記するために作ったノートの一部です。合格証の文面に「茲」が使われているところなど、やはり、漢文〜♪という雰囲気を出していますよね。
勉強には昨年同様、テキストをもとに作成したノートと、テキストを自分ですべて朗読したボイスレコーダーを使いました。ただ、論語と漢詩の大きな違いは、まず論語が孔子の教えか弟子の発言であるのに対して、漢詩は作者がみんな違うということ。また論語が地理的なことを(暗唱する分には)気にしなくてよいのに対して、漢詩は地図がないとまずイメージの区別がつかない、ということでした。
試験には作者のことが出るか不明だったので、ひととおり年表も作り日本人の漢詩も各級1篇ずつ出るので、そのあたりも多少調べました(実際は上級だと、書き下し文、すべて平仮名の書き下し文、漢字の空欄補充、訳(しかも選択肢)だけでした。おそらく修了試験の方がもっと記憶試しができるのでしょう)。また高校向け国語便覧の中国の地図で、舞台となる地名があれば長江流域や黄河流域を探し、20篇中19篇が絶句なので、起・承の色彩などの対比と、転・結の内容とが食い違わないように、一生懸命つなげてイメージして何とか覚えました。和歌を覚えるときに、上の句と下の句を違って付け替えてしまうことがないように苦心することがあるのと同様の努力が必要となりました。
さらに、「すべて平仮名の書き下し文」の練習をしつつ、この漢文検定は歴史的仮名遣いではなく現代仮名遣いなので、普段古典の授業で使う感覚を消すのに多少苦労しました。加えて紛らわしい同訓や間違いやすい訓読みのチェック、癖になっている間違った送り仮名のチェックも最後まで繰り返しました。
検定日の数日前には、20篇すべての書き下し文を何も見ずに思い出した順から書き出すということをしてみたのですが、19篇書けて、最後の1篇がどうしても出てきません。答え合わせをしたら、畏れ多くも詩仙李白の「廬山の瀑布を望む」でした(汗)。

日は香炉を照して 紫煙を生ず
遥かに見る 瀑布の長川を挂くるを
飛流直下 三千尺
疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと

…「銀河」といえば、かつて漢検で書けなかった「河漢」という語が浮かんでくる……そうか、本当に漢検1級に精通している人は、きっと自分が20篇の詩をランダムで書こうとするように、頭の中で6000字余りが系統立っていて、確実にアウトプットできるのだろうな(書き出すのに何時間かかるものなのか?)、とふと思い当たったのでした。
天の川の無数の星を眺めるように、何千という漢字を追いかけて、無数の表現や文学を追いかけて、……途方もないけれど、やっぱり、死ぬまで退屈はしないな、自分が何かを感じる心は、どのような境遇になってもなくしたくないな、と思うしろねこなのでありました。

30-3を受けました。

2019-02-04 07:45:35 | 日記
漢検1級30-3を昨日受検してきました。
「末枯れる」と「心悲しい」にやられました。ずっと前に目にしたきり、忘れてしまっていました。まだまだ漢字や和語に対する「心」が足りない自分を感じました。

会場は行き慣れた場所で、27番まで席がありましたが、実際は5名ほど来ていなかったようです。

今回は1か月前くらいから、いつもはパラパラ読みしかできなかった山本康喬氏の『漢字音符字典 増補改訂版』をずっと通しで拝読していて、楽しくてしかし気がつくと1週間前になっており、全部お復習(さらい)できた分野と見きれなかった分野が出てしまいました。それでも、明日から始まる定期考査の日程で自分の科目を最終日にしてもらうようにし、その作問に集中する期間と自分の勉強の追い込み期間をずらすようにしたり、1週間前からは何とかいつもより1〜2時間早く帰るようにするなどして、多忙な中でも時間をとりました。当日も例年の如く生徒募集関係日で皆は出勤日でしたがそれも免除してもらい、無事受検できました。勉強したものは書けましたし、知らないものは全く手が出ませんでした。ですが今年度は差し支えなく全回受検できたので、爽やかな気持ちです。

1週間前、少し風邪気味でしたが周囲はインフルエンザが流行りすぎて一時は生徒・教員を含め70人を超える不在を、来ている人々で何とか踏ん張ったという状況でした。しろねこの科の後輩もしっかり罹患してしまい、代行で仕事を引き受けたり、今年も湯島聖堂漢文検定を実施したりとバタバタでしたが、一応仕事と自分の勉強を両立し続けられた点はがんばりました!

試験中は、あまり自分を追い詰めず、30分問題用紙に解き、残りで解答用紙を埋めながら不明なところを考えました。このとき、最初思い出せなかった字の部首を三つほど思い出しました。解答用紙は裏から埋めて、あと書き取り・語選択書き取り・四字熟語が未だの時点で「残り10分です」と言われたときは多少焦りましたが、2分残して何とか書き終えて、まだ埋められていないところをやっつけでいくつか埋めて終わりました。

ここ暫く140点台をうろうろしているしろねこですが、勉強しているときに、前よりその字に馴染んだな、と思う字を見かける瞬間は増えてきました。前は主にその単語やその例文やその字形を知っていて正解するということが殆どでしたが、最近はその字の成り立ち上その解答がしっくりくるというか、改めてそれに気がついてそれらの字をしげしげと見つめることも多くなりました。それはしろねこにとってはとても嬉しいことです。より望ましい勉強の実感が得られるように、また漢字学習を続けていきます。